研究課題
新型コロナウイルス感染症流行の継続と、2月のロシアによるウクライナ侵攻によって、予定していた令和3年度末のロシア調査を行うことができなかった。そのため、令和3年度初めの研究計画で述べた通り、前年度から繰り越した研究費を使用せず、そのまま全額返還し研究課題を終了させることになった。今年度の研究成果として、1月にアムステルダムで出版された英語論文集では、カルムィク貴族・仏教僧侶とロシア中央政府・地方政府との協力関係を中心に議論し、両者をつなぐロシア帝国東洋学者の重要性が明らかとなった。また、この論文集作成の過程で、ロシアの仏教徒と南アジア・東南アジアの仏教徒、あるいは日本の仏教徒との関係について意見交換がなされ、本研究課題を今後さらに別な形で展開する上でも有益なものとなった。口頭発表として、6月5日に早稲田大学高等研究所主催の公開講演会(オンライン)で発表し、帝国と宗教世界のあいだで揺れる個人を論じた。ここでも東洋学者の果たした役割の重要性が顕著に見られ、本研究課題が議論してきたように、仏教徒諸地域の関係性を媒介する東洋学者に注目する視点の有効性が確認された。9月2日に開催された帝国医療に関する研究会(オンライン)では、伝染病対策における帝国権力と仏教僧侶の協力と対立について論じた。この研究会では、ロシア帝国以外のヨーロッパ諸帝国やその植民地の事例についても検討がなされ、それらとの比較研究の可能性と重要性が浮き彫りとなった。
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