本申請研究は精漿を利用したブタの繁殖成績の向上を目指し、精漿に含まれるタンパク質の機能と子宮内膜上皮の免疫反応に焦点をあて、精漿がブタの受胎性におよぼす影響を明らかにすることを目的としている。 研究初年度に立ち上げた豚の子宮内膜上皮細胞の単独培養系を安定的に実施できるようになったため、in vitroにおいて子宮内膜細胞に精漿を添加し、暴露後の各種増殖因子の発現変化を定量している。これまでに複数の増殖因子について発現量の変化が認められた。また、難航していた精漿の濾過については、いくつかのfiltrationおよび遠心条件を組み合わせることで可溶化タンパクの化学的性質に影響をあたえることなく、コンタミネーションを可能な限り排除することに成功している。これらの手法を用いることにより、in vitroにおいて精漿を子宮内膜上皮細胞に暴露させ、その初期反応を評価する実験系を確立し、実施してきた。 研究機関最終年度には、上皮細胞と間質細胞の共培養系での実験を行うと共に、これまでの成果を発表した。精漿に含まれるどの成分が子宮内膜細胞の遺伝子発現に作用するかを明らかにするために、精漿原液、透析処理を行った精漿および非働化処理を行った精漿の3種類を培養系に添加し反応を評価した。その結果、複数のサイトカイン発現が精漿添加後に上昇し、遅くとも培養開始12時間後には、培養液のみの対照群に対し有意差を認めた。特に、透析により除去された低分子物質が子宮内膜上皮細胞におけるIL-8およびCOX-2発現に寄与すること、IL-6発現には低分子物質が関与しないことがわかった。また低IL-1β発現には補体等の蛋白質以外の物質が作用する可能性があることが明らかになった。
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