研究実績の概要 |
昨年度得られた結果にもとづき、ナフタレン環の6位に長さが異なるアルキルエーテル基を持つ種々のモノマーを合成し、重合反応を試みた。その結果、溶解性が向上すると考えられた長鎖アルキル基(C12, C16)を導入しても溶解性が向上しなかった。このため、アルキル鎖を連結する官能基をエステル基に変えたモノマーを新たに合成し、重合反応を試みた。その結果、得られたポリマーは、アルキル基の炭素数にそれほど依存せず、クロロホルム等に溶解することが明らかになった。また、得られたポリマーの色はアルキル基に強く依存せず黄色であった。このことは、エステル基を有するポリマーは比較的伸びたらせんを取っており、これによってエーテル基を有するポリマーの場合がより溶解性が高くなったと考えられる。このようにらせんピッチと溶解性はトレードオフの関係にあることが明らかになった。 溶解性を保ちながら側鎖ナフタレン環を積層させるには、エステル基を有するポリマーのらせん構造を縮められれば達成できると着想した。そこで、温度によってらせんを縮ませることができれば、可溶性ポリマーでも積層構造が得られると仮定し、測定温度を変えてNMR測定を行った。その結果、分岐アルキル基を付与したポリマーにおいて、主鎖および側鎖のプロトン由来のシグナルが分裂することを見出した。この結果は計画の段階で予想していなかった結果であり、溶液中でらせん構造がバネのように伸縮していることを新たに見出すことができた。この結果は、本研究の先にある有機デバイスに動的性能を付与できる可能性を示唆するものである。 分子鎖末端への官能基導入については、反応進行を追跡する部分が困難であることがわかり、今後も継続して検討を進めることとした。
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