研究課題/領域番号 |
16K20891
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山形 聡 東北大学, 情報科学研究科, 技術補佐員 (50769940)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | CRFニューロン |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに視床下部培養細胞系を用いて、レプチンはCRF遺伝子発現を刺激することを明らかにした。本研究では、レプチンがCRFニューロンを刺激する視床下部内メカニズムの解明を目的とする。レプチンの作用機序として、CRF ニューロンへの直接作用、視床下部局所回路[グルタミン酸(Glu)作動性, GABA作動性ニューロン]を介する作用のほか、シナプス前への逆行性伝達物質を介する作用の可能性もある。実験に用いるのは新たに開発されたCRFニューロン蛍光可視化マウスを用いた電気生理学的手法である。また糖質コルチコイドがレプチン作用に及ぼす効果についても検討する。そこでまずCRFニューロン蛍光可視化マウス(CRF-Venusマウス)におけるVenus陽性ニューロンの性格づけを行うため、急性脳スライスを用い以下の電気生理学的検討を行った。 視床下部室傍核におけるVenusニューロンを-60mVに電位固定し興奮性シナプス後電流(EPSC)を観察した。EPSCがnon-NMDA拮抗薬 CNQX(20μM)およびNMDA拮抗薬AP5(100μM)で遮断されることを確認した。よってVenus陽性ニューロンにグルタミン酸作動性入力が存在することが証明された。次にgramicidin添加により細胞内Clイオンがピペット内液に置き換わるのを抑えた条件で、CNQX、AP5存在下で抑制性後シナプス電流(IPSC)を観察した。IPSCはGABA受容体アンタゴニストであるgabazine(20μM)で完全に消失した。よってVenus陽性ニューロンにGABA作動性入力が存在することが証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CRF-VenusΔNeoマウスを用いて、Venus陽性ニューロンへのGABA作動性及びグルタミン酸作動性入力は証明できたが、現時点でVenus陽性ニューロンにおけるレプチン受容体の発現を確認できていないため、レプチンの潅流液中への添加がGABAおよびグルタミン酸作動性入力へ作用するかは不明である。そのため次年度に予定していた「高用量corticosteroneペレット皮下植え込みまたは両側副腎摘除(ADX)を行い、慢性の GC 過剰および欠乏状態とし、このGC慢性過剰と欠乏が CRFニューロンへのGlu作動性およびGABA作動性入力に及ぼす影響」を優先して検討することとしたが、予備検討段階でcorticosterone補充量の決定等に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、Venus陽性ニューロンにおけるレプチン受容体の発現を確認する。蛍光免疫染色での確認が困難な場合はin situ hybridization等他の方法も検討する必要がある。CRFニューロンにおけるレプチン作用メカニズムについては、脳急性スライスを作成しVenus陽性細胞にパッチクランプ法を用い、レプチンが EPSPおよびIPSPに及ぼす影響を観察する。潅流液中にObRb受容体拮抗薬を前添加し、レプチンによるGABAおよびGlu作動性入力への影響を検討する。レプチンは JAK2-STAT3を介して作用するため、JAK 阻害薬を潅流液に添加しレプチンによる GABA作動性、Glu作動性入力への影響を検討する。またこれらの作用へのグルココルチコイドの影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前倒し支払い請求を行った範囲内で試薬や抗体の購入に充てた。その他次年度分の実験と併せて解析を行うため、次年度に繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
実験物品費として、各種免疫染色に用いる抗体、ELISA測定キット、実験動物代を主な消耗品として計画している。
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