研究課題/領域番号 |
16K20892
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
仁平 政人 弘前大学, 教育学部, 講師 (20547393)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 日本文学 / 表象文化論 / 前衛芸術 / 東北 |
研究実績の概要 |
平成29年度は前年度に引き続き、(Ⅰ)寺山修司・土方巽を中心とした1960~70年代の文学・芸術言説における「東北」表象の事例を収集し、同時代の文化的・社会的な言説も視野に入れて検討を行った。特に、寺山における同時代の民俗学的言説の受容の問題について、調査・検討を進めた。また、(Ⅱ)寺山の文学・演劇・ラジオドラマ・映画などの中で、特に青森・東北に関わるものの分析を行ったほか、(Ⅲ)青森における寺山に関連する行事に実際に参加し(幻想市街劇「田園に死す」(三沢市、平成29年8月6日)など)、関係者への聞き取りも行った。(Ⅰ)に関しては、国立国会図書館、三沢市寺山修司記念館、青森県立図書館における文献調査、また古書店を通じた文献の購入を通して、資料の収集を行った。 研究成果として、三沢市寺山修司記念館における資料調査を踏まえた論文「「最後の仮面は、いつでも笑っている」―寺山修司『毛皮のマリー』(天井桟敷公演台本版)の射程―」(『郷土作家研究』第38号)や、戦後の旅行メディアと地方表象との関連を取り上げた学会発表「「趣味の旅行」、その多様性と葛藤」(日本比較文学会東北支部第17回比較文学研究会、平成30年3月24日)がある。また、広義の文化表象の翻訳・拡散の様相に関わる研究として、論文「「旅行」する言葉、「山歩き」する身体―川端康成『雪国』論序説―」(『日本文学』第66巻第6号)、学会発表「「箱」の翻訳―村上春樹における〈ハードボイルド〉の方法―」(第6回村上春樹国際シンポジウム、平成29年7月9日)も本課題に関連する業績と位置づけられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
寺山修司の作品における「東北」表象の問題についてはおおむね順調に分析を進められており、その成果の一部はすでに論文等で示しているほか、平成30年度中に複数の論文・学会発表での公表を予定している。ただしその一方で、寺山の活動についての検討に多くの時間を要しているため、土方巽に関する調査・分析は遅れている。また、寺山・土方の没後における文化行事についても、資料収集・聞き取りともなお不十分な段階である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年である本年度は、これまでの研究成果を研究発表および論文で公表するとともに、①寺山に関する追加の資料調査および作品分析、②土方巽に関する調査・分析、③地域の文化活動に関する調査に重点的に取り組むこととする。②に関しては、慶應義塾大学アート・センターの土方巽アーカイヴでの調査を行う。また③に関しては、青森・秋田における寺山・土方関連の行事への参加と、関係者への聞き取りを含めた調査を行う予定である。
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