平成29年度にクロマチン免疫沈降法(ChIP assay)の実験結果の再現性に問題が生じたため、使用していたHT1080-Ippo1細胞を再びクローニングし、ChIP assayを用いてADAR1のDNA切断部位への集積性を検討した。再現性の問題はHT1080-Ippo1細胞の4-OHT処理後のDNA二重鎖切断の誘導が不完全な細胞が混在していることが考えられたため、リクローニングを行なった。その後、4-OHT処理したHT1080-Ippo1細胞をADAR1抗体を用いて免疫沈降し、IPPo1カッティングサイトのプライマーを用いてPCRを行なったところ、4-OHT処理細胞ではクリアなバンドがみられた。前年度はADAR1がDNA二重鎖切断部位由来の短鎖RNAを介してDNA修復に関与している可能性を検証するため、培養細胞にRNase処理を行い、RNAを分解した際のADAR1のDNA損傷部位への集積能の変化をタンパク蛍光染色を行ったところ、RNase処理した場合にADAR1のDNA損傷部位への集積性が低下する傾向が見られた。しかし、RNase処理後のADAR1のDNA損傷部位への集積において、再現性に問題が生じ、RNAseの濃度と処理時間を様々検討したが、結果のばらつきが非常に大きく、問題を解決できなかった。RNaseまたChIP assayを用いてRNase処理後の集積性においてもタンパク蛍光染色と同様、結果のばらつきが大きく、クリアな結果を得ることはできなかった。RNAのみを破壊することを目的としたRNAse処理を行ったことが再現性に問題があった可能性を調べるため、DNAとRNAのハイブリッドを破壊するRNAse Hを処理してADAR1のDNA損傷部位への集積をタンパク蛍光染色およびChIP assayで調べたが、結果のばらつきが大きく、クリアな結果を得ることはできなかった。
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