研究実績の概要 |
本研究では、励起状態分子内プロトン移動(ESIPT)特性を有する星型発光性分子の創製を目指し、3-ヒドロキシチオフェンをプロトンドナー部位、1,3,5-トリアジンをプロトンレセプター部位として構成される2,4,6-トリ(3-ヒドロキシ-2-チエニル)-1,3,5-トリアジンを基本ユニットに用い、π共役拡張部位として各種アリール基を導入した標的分子群の合成と特性評価を目的とする。 平成28年度は標的分子の合成経路を確立すべく、合成検討を行った。3-メトキシチオフェンと1,3,5-トリアジンから2,4,6-トリ(3-メトキシ-2-チエニル)-1,3,5-トリアジンを合成した後、メトキシ基をヒドロキシル基に変換することで基本ユニットとなる2,4,6-トリ(3-ヒドロキシ-2-チエニル)-1,3,5-トリアジンを合成した。その後、ヒドロキシル基の保護、臭素化、π共役拡張部位としてのアリール基の導入、脱保護を経由して2,4,6-トリ(3-ヒドロキシ-5-アリール-2-チエニル)-1,3,5-トリアジン誘導体の合成を達成した。また、2,4,6-トリ(3-メトキシ-2-チエニル)-1,3,5-トリアジンから臭素化、カップリング反応を経てヒドロキシル基をメチル保護した比較化合物に相当する2,4,6-トリ(3-メトキシ-5-アリール-2-チエニル)-1,3,5-トリアジンの合成を達成した。合成した分子群については、核磁気共鳴法、質量分析法、元素分析法を用いて構造解析を行い、その分子構造を確定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
標的分子として設計した2,4,6-トリ(3-ヒドロキシ-5-アリール-2-チエニル)-1,3,5-トリアジン誘導体の合成経路を確立するに至った。また、ヒドロキシル基をメチル保護した比較化合物の合成も達成できており、現在合成した分子群の特性評価を進めている。 合成検討結果として、標的分子の合成経路を確立できたため、概ね研究計画通りに進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、合成した2,4,6-トリ(3-ヒドロキシ-5-アリール-2-チエニル)-1,3,5-トリアジン及び比較化合物となる2,4,6-トリ(3-メトキシ-5-アリール-2-チエニル)-1,3,5-トリアジンの吸収・発光特性評価を実施し、分子内3か所での励起状態分子内プロトン移動(ESIPT)を経由する発光の発現が可能かを検証する。また、ESIPTに基づく発光波長や強度が溶媒やイオンなどの外的要因によって変化する知見を踏まえ、合成した分子の環境応答性(溶媒極性、プロトン、塩基)について評価を行う。 また、3-ヒドロキシチオフェンをプロトンドナー部位、1,3,5-トリアジンをプロトンレセプター部位として構成されるESIPT発光分子の創製と発光挙動の解明を目指し、トリアジン骨格上の側鎖を二つジメチルアミノ基に変更した6-(3-ヒドロキシ-5-アリール-2-チエニル)-2,4-ビス(ジメチルアミノ)-1,3,5-トリアジン誘導体の合成と評価も並行して進める。
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