研究課題
低炭素社会の実現に向け、高温超伝導コイルによる発電・貯蔵エネルギーシステムの開発が急務である。特に、冷凍機冷却によって、液体ヘリウムを用いない資源枯渇に対応した冷却システムにおける運用が期待されており、従来の低温超伝導コイルに比べ、飛躍的に高磁場における運用も期待されている。しかし、高温超伝導コイルは熱暴走により焼損するという欠点があり、その検出は非常に困難である。高温超伝導コイル熱暴走による焼損に対する保護方法としては、巻線ターン間の絶縁をしない無絶縁コイルによる自己保護が提案されているが、この手法は磁場安定性が低い欠点を持つ。そこで、本研究では、ターン間に半金属や半導体を用いた半絶縁コイルを提案し、磁場安定性・熱的安定性の両立した高温超伝導コイル機構の開発を目指す。本年度は、高温超伝導コイルの特性評価に向けた超伝導特性評価装置の立ち上げと、熱電磁気数値解析に向けた数値計算システムの立ち上げを行なった。また、高温超伝導コイルの要素開発として半金属はんだ接合した高温超伝導線材における超伝導特性評価を行なった。具体的には、(1)試料作製として、希土類系高温超伝導REBCO線材の作製、市販の高温超伝導(Y,Gd)BCO線材の半金属はんだ接合、(2)試料評価として、200A級超伝導線材の特性評価装置の立ち上げ、市販の高温超伝導(Y,Gd)BCO線材の評価、(3)熱電磁数値計算のため、有限要素解析ソフトCOMSOLによる数値計算システムの立ち上げを行った。結果として、(1)はんだ付けによる高温超伝導線材の劣化がないことを確認し、(2)仕様書通りの高温超伝導線材の超伝導特性を確認し、(3)計算システムの立ち上げを行なった。
3: やや遅れている
追加で有限要素解析ソフトの計算モジュールを購入する必要があるため
平成29年度には、小型の半絶縁高温超伝導コイルの試作と、コイル特性試験を行い、熱的安定性の検証を行う。また、平成28年度に得られた線材の要素特性と立ち上げた計算システムを用いて、高温超伝導コイルにおける熱暴走の数値計算と、構造の最適化を行う。
希望購入物品の金額を下回っていたため
研究の遂行に必要な物品を購入する
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (31件) (うち国際学会 12件、 招待講演 2件)
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