研究課題/領域番号 |
16K20899
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
水野 聖士 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 助手 (80646795)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生命情報 / 妊娠高血圧症候群 / 人工知能 / 深層学習 |
研究実績の概要 |
これまで、多因子疾患についての多くの研究から、多因子の複合的な相互作用が疾患発症に大きな影響力をもっていることが知られるようになる一方で、多くの疾患について発症予測、発症機序の解明、有効な介入方法の開発が困難である状況が続いている。これらの状況を踏まえ、遺伝因子、曝露因子などの大量のデータを統合し、 疾患の発症予測、治療法の確立、治療結果の最大化を行う精密医療の概念が提唱されているが、これを実現するためには、巨大なデータを読み解き、新たな知見を発見する深層学習モデルを備えた人工知能が求められる。深層学習は、これまでの方法で変数選択に推論の結果が強く縛られていた問題を解決し、正確な推論を多くの問題に対して適用可能となることが期待される。妊娠高血圧症候群(PIH)は、全妊婦の約7%に起こり、全妊婦の1~2%が重症患者である高頻度かつ重症化しやすい疾患である。重症PIHは母体の周産期死亡のリスクを高めると共に、胎児機能不全や早産を誘発し、妊娠中断や児の後遺症リスクを増大させるため、児の生命や予後への影響も大きい。これまでに、PIHの原因解明のために疫学研究、家族性連鎖研究などが行われ、遺伝因子・曝露因子を含む多くのリスク因子の関与が指摘されると共に、発症予測のために多くの研究がされているが、その病態は不明であり、有効な発症予測が可能な変数の組み合わせは見つかっていない。深層学習モデル構築のための正解ラベルを得るため、PIHの病型を分類するケースファインディングのためのアルゴリズムを開発した。欠損の多い医学系データをハンドリングするための、多重代入法について検討し、網羅的な曝露因子情報のデータセットを構築した。PIHを予測する学習モデルを構築するため、得られた病型を正解ラベルに使用し、網羅的な曝露因子情報を入力にとり、高精度に正解ラベルを予測する深層学習モデルを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに研究を実施しているため、おおむね順調に進展している
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今後の研究の推進方策 |
深層学習は反復学習をくりかえし、モデルの更新を行うが、この反復学習に伴うモデルの更新と予測結果の変化を統計的サンプリング法に基づく最尤推定により結び付け、予測結果の更新に対する責任変数を推定し、責任変数の予測への寄与率をオッズ比として算出する、予測に対する責任変数を推定する方法を検討する。これには、無限混合モデルを仮定したノンパラメトリックベイズ法の適用を考えている。ノンパラメトリックベイズ法は、ノイズの多い連続信号である音声信号から言語モデルを作成するなど、複雑で高度な学習モデル構築に応用が進んでおり、時系列かつ、多くのノイズを含む深層学習の学習モデルから、学習に寄与する信号を分離し、学習に対する責任変数を得られることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度請求額とあわせ、平成29年度の研究遂行に使用する予定である。
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