常染色体劣性遺伝性疾患であるニーマンピック病C型 (以下、NPC) では、臨床症状や発症年齢の多様さ、現行検査の課題や早期治療の重要性から、迅速な検査法の構築が切望されていた。本研究では、体液中バイオマーカーのLC/ESI-MS/MS分析によるニーマンピック病C型の新規診断法開発を行った。平成28年度には、基礎的分析条件検討の後、疾患マーカー探索を行い、新規に2つのマーカー候補分子を同定した。 平成29年度は、それら新規診断マーカー候補分子の精密分析法を構築し、それらの診断性能を評価することで、新規NPC診断法としての検討を行った。なお、患者検体から見出した新規診断マーカー候補分子は、硫酸抱合型コレステロール代謝物であり、尿中に高濃度に存在することがわかったため、尿を検体として用いた。 前処理を簡便化するため、2本のカラムを組み込んだスイッチングシステムを用いて測定系を構築した。種々検討の結果、測定対象とするNPC診断マーカー候補5分子をいずれもを相互に分離可能であり、なおかついずれの尿中夾雑成分からも良好にLC分離可能な条件を見出した。本条件を用いて検量線を作成したところ、3000倍以上の範囲で良好な直線性を示した。マトリクス効果についても検討したところ、影響はないことがわかった。また日内・日間再現性試験も行い、いずれの結果も良好であり、検体の安定性についても問題はなかった。構築した分析法を用いて、NPC患者、コントロールの健常人尿の測定を行ったところ、いずれの代謝物もNPC患者で高濃度であり、診断マーカーとして有用であることがわかったが、そのうち1つの代謝物は感度・特異度100%と特に優れることがわかった。また、高速スクリーニング化についても検討を行い、精度は若干落ちるものの有用であることがわかった。以上より、NPC診断に有用な新規診断法開発を進めることができた。
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