研究課題/領域番号 |
16K20903
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
矢部 修平 東北大学, 農学研究科, 准教授 (60564838)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | クテドノバクテリア / 二次代謝物 |
研究実績の概要 |
「クテドノバクテリア綱」は2006年に創設され、Type strainが僅か6種の知見の乏しい分類群である。この系統は放線菌と類似した複雑な形態分化を示し、二次代謝物関連遺伝子群の多さなどから多様な生理活性物質の探索源として魅力的な微生物資源である。本研究では、平成28年度までに①各種環境中のクテドノバクテリア叢の解明し、②選択的分離法を確立して分離を目指し、29年度は③分離株の分類学的性質を解明して提唱し、④生理活性物質を探索する計画である。 今年度は、本系統の棲息環境を調べるため、設計した本系統特異的プライマーを用い、各種環境DNAからの16SrRNA遺伝子アンプリコンを解読することでクテドノバクテリア叢を解析した。その結果、森林土壌や樹皮などの身近な環境に推定種数(Chao1)2503-5613種、多様性指数(Shannon)4.21-6.42と多様に棲息している事が明らかとなった。また本系統の存在比率を調べたところ、土壌や樹皮などで0.01~0.1%程度と低く、宮城県の地熱地帯は13%、インドネシアの地熱地帯付近の土壌では47%と圧倒的に優占している事がわかった。 続いて、インドネシアの水田土壌から分離されたクテドノバクテリア綱に属する新規中温性細菌の分類学的試験を実施し、新たに新属・新種Dictyobacter aurantiacaを提唱した。 選択分離法を検討した結果、無機塩・ゲランガム培地での好熱性クテドノバクテリアの選択的分離法は既に見出していたが、防腐剤であるアジ化ナトリウムに若干の耐性があることを新たに見出し、それを含む培地を用いて群馬県の高原からKtedonobacterales目の科・属レベルで新しい系統に属する中温性細菌を複数株分離する事に成功した。現在これらの系統分類学的試験を実施中であり、本成果は本分類群の系統を飛躍的に開拓される結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の計画は①各種環境中のクテドノバクテリア叢の解明し、②選択的分離法を確立して分離を目指すことであり、これら研究課題は概ね達成できた。さらに、新しく発見した高次分類群で新規のクテドノバクテリアは既に分類学的試験を実施中であり、当初の計画を前倒しで行っている。従って、今年度は全体的に概ね計画通りである。一方で、29年度に予定している生理活性物質の探索は、スクリーニング条件や精製条件などの最適化など様々な困難が予想されるため、速やかに着手する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、分離株の分子系統解析、培養生理学的試験、化学分類学的試験を実施し、クテドノバクテリア綱に高次分類群で新規の系統を創設する予定である。また、新規の系統は次世代シークエンサーPacBioを用いてゲノムを解読し、その特徴や二次代謝物関連遺伝子群を解析する。併せて、台湾の地熱地帯や付近の高原から採取した土壌や日本のその他の火山地帯付近の高原からも土壌を採取し、本分類群のさらなる獲得を目指す。そして、これまでに分離したクテドノバクテリアに属する中温性細菌14株、好熱性細菌57株を用いて、抗菌活性、抗ガン活性、抗酸化活性などを指標に生理活性物質の探索を行う。生理活性物質を見出したら、精製し、構造解析を試みる予定である。
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