研究課題
カーボンナノチューブ(CNT)の力学的特性評価に関して,平成30年度は層数が5~8層程度の細経多層CNTを評価対象に実施した.細経CNTでは,太径CNTに比べて潜在欠陥の密度や大きさが小さいことに起因して比較的高い公称強度であることが認められた.また,CNTの公称強度を表現する理論モデルを構築し,公称強度は有効強度および破断面積率の積で表すことができることを示した.当該モデルを用いて公称強度,有効強度および破断面積率からなる3次元ダイアグラムを作成することで,CNTの公称強度向上のための構造制御ガイドラインの構築ができた.本研究で評価したCNTおよび既往の研究で報告されているCNT強度の文献値を当該ダイアグラムにプロットすることで,CNTの公称強度に対する現時点での状況を把握することができる.低結晶性のCNTでは,全層破断を生じるものがほとんどであり,破断面積率が大きく有効強度が低い傾向が認められた.一方,高結晶のCNTでは剣鞘型破断を生じており,これにより破断面積率は小さいものの高い有効強度を有している.これらの結果から,現在の技術で合成できるCNTでは,有効強度と破断面積率がトレードオフ関係にあることがわかった.CNTの公称強度増大のためには,適度な層間架橋結合が導入された結晶構造でクリーンブレーク型破断を生じさせ,かつ高い有効強度を示すCNTを開発することが重要であることがわかった.前年度までの研究により,CNT軸方向の線膨張係数は負値であることを明らかにしている.線膨張係数とCNT径および結晶性との関係を系統的に評価し,直径が大きい(層数が多い)CNTおよび結晶性の高いCNTが大きな負の線膨張係数を有する傾向があることがわかった.これらの結果から,CNT軸方向の線膨張係数の制御のためには,CNT径および結晶性を適切に制御することが重要であることがわかった.
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Materials Research Express
巻: 6 ページ: 055047~055047
10.1088/2053-1591/ab069f
Mechanical Engineering Journal
巻: Advance online publication ページ: 印刷中
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http://www.hashidalab.rift.mech.tohoku.ac.jp/