研究課題/領域番号 |
16K20909
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金光 祥臣 東北大学, 薬学研究科, 助手 (30752943)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 放射線耐性 / メタボロミクス / プロテオミクス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、がん治療における放射線療法耐性化の機序を解明し、治療効果の向上、コンパニオン診断に資するバイオマーカーを開発することである。そのための方略の一つとして、臨床的放射線量に対して、耐性能を有するヒトがん細胞株と感受性細胞株とのメタボローム及びプロテオームの比較解析を実施し、変動する分子を同定する研究を進めてきた。本研究には、様々な癌腫における安定した放射線耐性細胞のモデルが必要不可欠であるため、新たに AGS (ヒト胃腺癌) 細胞、TE-8 (ヒト食道癌) 細胞、A549 (ヒト肺癌) 細胞、HUH-7 (ヒト肝癌) 細胞の放射線耐性株の樹立に着手した。すなわち、それぞれの細胞株に対して、0.5 Gy の X 線を 1 日 2 回、少なくとも 3 週から 8 週間毎日照射を続けることで標準的な放射線治療スケジュールの X 線照射に対して耐性能を有する細胞株の作製を行った。その結果、AGS 以外の細胞株は、低線量の照射条件下においても安定して増殖することが確認されたが、放射線感受性試験の結果、親株と比べて有意な感受性の差は確認できなかった。 そこで分割照射線量を段階的に増加させる方法に切り替えたところ、TE-8、 HUH-7 においては徐々に親株と比べて強い放射線耐性能を獲得してきた。一方で、A549 は高線量の X 線を照射し続けることで、明確に細胞の形態が変化し、耐性を示すことが明らかとなった。これらを資材として、まずがん幹細胞マーカー分子や酸化ストレス応答分子に着目し、その分子の量的変動を解析した結果、耐性化獲得のメカニズムにこれらの分子が関連していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新たな放射線耐性細胞株の樹立が当初の予定よりも難航し、必要以上の時間を要してしまった。
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今後の研究の推進方策 |
放射線耐性細胞の作製過程において、継時的にオミクス解析と標的分子の定量解析を行い、耐性化に関与する分子のダイナミクスを明らかにする。また、標的タンパク質の強発現もしくは、発現抑制実験により、生理機能や放射線耐性能への影響を評価する。次いで、分子ネットワーク解析ツール等を駆使し、その代謝系に関与するタンパク質の変動を組み合わせた代謝マップを作成する。これらの知見を集約して、最も特異性の高いバイオマーカー代謝物を抽出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
放射線耐性細胞株の樹立に難航し、昨年度内に予定していたLC-MS によるオミクス解析がまだ本格的に行えなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
FACS などによる標的分子の発現解析およびLC-MS を用いたプロテオミクスおよびメタボロミクスに必要な消耗品に使用する。
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