研究課題/領域番号 |
16K20912
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
廣芝 伸哉 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (40635190)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナノインプリント / 有機半導体 / ナノ構造化 / グラフォエピタキシ |
研究実績の概要 |
本研究で取り扱う、機能性有機材料でsub-20nm以下の3次元ナノ構造を作製した例は僅少である。特に、光物性評価、トランジスタ特性などの物性評価を行い、系統的に議論した例はない。本研究で用いるペリレン系(PTCDI)誘導体は、ナノ構造と分子配向が大きく物性に影響することが知られている。それゆえ、液晶性の機能性有機分子のナノ構造化と配向制御、デバイス化が可能となれば、PTCDIに限らず数多くの液晶性の機能有機材料へ広く利用できるようになる。電子移動度、励起子拡散長などの物性値などと分子配向、サイズ、形状を系統的に議論する。 具体的には、ナノインプリントリソグラフィを利用して、機能性有機材料のナノ構造化・配向制御を行うことを目指している。また、デバイス応用が可能な機能性有機材料について構造解析により分子配向の評価をおこなう。加えて、ナノ構造のサイズおよび分子配向の方位に適したデバイス構造を試作し物性測定を行う。配向制御によりトランジスタやアクチュエータなどのデバイスについて発光寿命測定やトランジスタ測定、電気測定などの手法を用いて、ナノ構造・配向制御された電子移動度、イオン伝導、励起子拡散長の評価を行い基礎物性の解明とデバイス特性の向上を期待し、研究を推進してきた。
また、ナノ構造化のために重要なSiO2のナノパターン作製のためのエッチング、残膜除去プロセスの最適化を行った。加えて、機能性有機材料のナノ構造の作製と配向の評価を行った。当初計画と異なるグラフォエピタキシによるナノ構造作製にも挑戦し、本手法のほうが当初計画の熱ナノインプリント法よりも有力であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画では、ナノインプリントリソグラフィによりパターン作製、エッチング、残膜除去プロセスによりSiO2のナノパターン作製を目標に実験を実施した。当初計画どおり、エッチング条件、残膜除去プロセスを実施することで、再現性よくナノパターンを作製することに成功した。また、熱ナノインプリントにより機能性有機材料のナノ構造作製を計画していたが、研究進行中の結果から、グラフォエピタキシによるナノ構造作製のほうが有力であることが判明し、ダメージ無く機能性有機材料のナノ構造を作製できることが明らかとなった。 また、PTCDI誘導体は高い電子移動度を有する有機半導体であるが、これ以外の有機半導体材料2種についても検討を行った。その結果、PTCDI誘導体よりも移動度が高い新規有機半導体材料については、配向制御を行った高いアスペクト比を有するナノワイヤの作製に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、ナノ構造のサイズおよび分子配向の方位に適したデバイス構造を作製する。特に、当初計画では、熱ナノインプリント法による配向制御を目指していたが、1年目の成果によりグラフォエピタキシによるナノ構造作製のほうが有力であることが判明し、ダメージ無く機能性有機材料のナノ構造を作製できることが明らかとなった。この結果を踏まえ、配向制御によりトランジスタやアクチュエータなどのデバイスを作製し特性評価を行う。各種の物性測定、電気特性からナノ構造・配向制御された場合に、電子移動度、イオン伝導、励起子拡散長などの物性値の向上を目標に掲げ、基礎物性の解明とデバイス特性の向上、長寿命化を目指した実験を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、単純な機能性有機材料薄膜の蒸着を行うための単純な真空チャンバーを購入予定であった。しかし、研究の推進でグラフォエピタキシによる成膜が極めて有用であることが明らかとなった。このため、当初購入予定であった真空チャンバーの仕様を変更し、基板加熱機構が追加で必要となった。このため、本年は、基板加熱機構部のみを購入し、チャンバーその他の購入に予算を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画から仕様変更のあった真空チャンバーに関して、次年度の初期に購入費用として予定している。仕様変更による金額変更分に関しては、本年度の予算と合算することにより問題なく購入が可能であり、執行予定である。その他の消耗品や、旅費等の金額については変更は無い。
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