研究課題/領域番号 |
16K20914
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大野 肇 東北大学, 工学研究科, 助教 (20769749)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 炭素循環 / 低炭素社会 / マテリアルフロー解析 / 産業連関分析 |
研究実績の概要 |
社会における炭素滞留を可視化することを目的に、素材としての炭素の供給源である石油化学基礎製品と木材に着目し、日本国内におけるそれらの着目素材がどのような経路をたどって最終製品となり、社会に滞留するのかを産業連関分析マテリアルフロー解析手法を用いて分析した。2000年、2005年、2011年の産業連関表を用いてそれぞれの年で社会に投入された炭素量とその使用形態について時系列で検討を行い、上記三時点では新たに滞留に加わった炭素のグロス量は大きく変わらないことが明らかとなり、現代社会において炭素含有製品が飽和状態にある可能性が示唆された。一方で、年間の炭素滞留グロス増量は、同年間の二酸化炭素排出量と比べて約4.5%にしか満たないことも明らかになった。この結果から、人為的な炭素固定の規模は非常に小さいと見えるが、森林と比べるとそれほど大きな差はないことが明らかとなり、炭素を固定する媒体としての社会が一定の役割を持つ可能性が示唆された。 これらの結果は、International Society for Industrial Ecology Socio-Economic Metabolism conference 2016(国際会議)および日本LCA学会第12回研究発表会(国内学会)において発表を行った。 今後の展開として、作成した産業連関表と結果をもととし、炭素含有製品のリサイクル方法によって社会における炭素滞留がどのように変化するのかを可視化するMaTrace手法を用いて解析し、低炭素社会の実現に向けて求められる技術開発の方向性について検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に計画していた、炭素フロー可視化のための産業連関表の構築およびそれを用いた分析はほぼ完遂された。また、樹脂のマスバランスを統計的に検討し、プラスチックリサイクルによる樹脂供給が存在する可能性を見出すことができた。産業連関表にその流れを組み込むことができたことは、次の段階へ研究を進める重要な進展であったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の研究計画に基づき、固定炭素の動的フロー解析(MaTrace)を行う。MaTraceのモデル拡張については単年の動的フロー解析の結果を検討したうえでその必要性を改めて吟味し、求められる情報及び数学的知見の収集を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定されていた書籍及び統計資料の購入がアカデミック価格の適用などにより少なく済んだこと、また研究成果の論文化が遅れた関係で英語論文執筆の際の英文校閲や投稿料、印刷代などに充てていた予算分を使用することができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は主に研究成果の論文化に伴う諸費用として使用する。翌年度分として請求した助成金については、当初の計画通りの配分で使用する。
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