産業連関マテリアルフロー解析を用いて、石油化学製品(エチレン、プロピレン、その他の石油化学基礎製品、ベンゼン、トルエン、キシレン、その他の芳香族基礎製品)および木材に起因する炭素のうち、日本国内の経済活動に伴い製品へ固定されるものについて物質フローの可視化を行った。結果として、石油化学製品由来630万t、木材由来790万tの炭素が製品として日本国内に流入したことが明らかとなった(2011年)。この量は、2011年の年間CO2排出量の4.1%を占める。従って、製品中の炭素を長期に渡り有効利用し、廃棄時におけるCO2としての排出を防ぐことが可能であれば、一定量のCO2排出を回避することが可能であることが示唆された。しかしながら、現状の政策や商業的に用いられている技術だけでは、多くの炭素が散逸しており、ライフサイクルアセスメントを用いた技術評価によりCO2排出削減に寄与すると明らかになっているような革新的な技術の導入と、その開発導入を支援する政策の必要性も明らかになった。この研究結果はEnvironmental Science and Technology誌(IF.6.198)に掲載された。 また、産業連関マテリアルフロー解析を動的に拡張したMaTraceモデルを用い、革新的な技術が導入された際の、炭素利用形態の変遷の可視化に取り組んだ。最終製品の中で最も炭素含有量の大きい自動車中のプラスチックに着目し、結果として廃自動車処理で発生する破砕残渣(ASR)の高度リサイクルによって2050年における炭素の残存率が27倍にも向上する(現状0.44%→12%)ことが推計され、ASRのリサイクル技術の開発導入の重要性が示唆された。加えて、自動車以外の製品においても、廃プラスチック回収率を挙げることが、炭素の長期利用に大きく寄与することが明らかとなった。
|