研究課題/領域番号 |
16K20917
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
別府 薫 (下田) 東北大学, 医学系研究科, JSPS特別研究員(PD) (40747458)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アストロサイト / てんかん / 光遺伝学 |
研究実績の概要 |
神経細胞が過剰に活動するてんかんという病態は、これまで、神経細胞そのものの異常が原因であると考えられてきた。しかし、神経細胞をターゲットにした抗てんかん薬では、効果が十分でないことや、副作用が大きいことが問題になっている。本研究では、神経細胞を密接に取り囲むアストロサイトからの信号が、神経細胞の過興奮状態を作り出している可能性を調べる。 視床の急性スライス標本を作製し、薬物によっててんかん発作様の神経過興奮状態を作った。そして、光遺伝学を用いてアストロサイトの状態を操作した場合の、神経発火の変化を調べた。アストロサイトの状態を細胞選択的に操作するために、アストロサイト特異的にChR2やArchTが発現している遺伝子改変マウスを用いた。ChR2刺激によって、アストロサイトは脱分極や酸性化を起こし、ArchT刺激によって過分極やアルカリ化を起こす。本研究では、アストロサイトのArchT刺激によって、神経細胞が過分極し、過剰な発火が抑制されることを明らかにした。神経細胞の発火のリズムは、神経細胞に発現するIhチャネルの活性が関与していることが知られている。我々は、アストロサイトのArchT刺激によって、Ihチャネルの活性が低下することで、神経細胞の発火が抑制されていることも明らかにしている。現在は、Ihチャネルに作用するアストロサイトからの伝達物質を特定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、神経細胞のIhチャネルに作用する、アストロサイトからの伝達物質を特定している。様々な阻害剤を試しているが、現在のところ、伝達物質は特定できていない。そこで、マイクロダイアリシス法と質量分析法を組み合わせた手法を用いることにより、アストロサイトのArchT刺激に応じて増加あるいは減少する伝達物質を網羅的に検出することを試みている。
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今後の研究の推進方策 |
アストロサイトからの伝達物質を網羅的に検出するために、マイクロダイアリシス法と質量分析法を組み合わせた手法での実験を進める。また、これまではin vivo動物やスライス標本を用いて研究を進めてきたが、アストロサイトからの伝達物質を効率よく検出するために、アストロサイトを単離した培養条件下での実験も進める予定である。平成28年度から、細胞培養の実験セットアップの立ち上げを進めている。
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