研究課題
神経細胞が過剰に発火するてんかんという病態は、これまで、神経細胞そのものの異常活動が原因であると考えられてきた。しかし、神経細胞をターゲットにした治療薬では効果が十分でないことが問題となっている。本研究では、神経細胞を取り囲むグリア細胞であるアストロサイトからの信号が、神経細胞の過興奮状態に関与している可能性を検証する。具体的には、神経細胞の興奮状態に関与するGliotransmitterの放出経路を調べて、それら伝達物質の放出がてんかん発作にどのように関与しているかを調べる。アストロサイトから放出されるグルタミン酸や乳酸(Lactate)は、神経細胞の興奮状態に作用することが知られている。昨年度(平成28年度)は、アストロサイトからどのようにしてグルタミン酸や乳酸が放出されるのかを、脳スライス標本を用いて電気生理学的に調べた。最終年度(平成29年度)は、平成28年度に得られた実験データを解析する作業を行った。興奮性神経細胞が放出するグルタミン酸は、アストロサイトに発現するグルタミン酸トランスポーターによって回収される。最終年度の解析により、グルタミン酸トランスポーターの回転によるイオン流入が引き金となって、アストロサイトのVolume-sensitiveアニオンチャネルが開き、グルタミン酸イオンが放出されることを明らかにした。また、アストロサイトに発現したArchaerhodopsinの光刺激によって細胞内をアルカリ化(または過分極)すると、乳酸の合成または放出が増加することも明らかにした。研究期間全体を通して、アストロサイトからグルタミン酸やLactateが放出される機序を明らかにした。これらの放出メカニズムがてんかん発作時にどのように働くのかを、In vitroやIn vivoの実験で今後調べる必要がある。
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Scientific Reports
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