沈み込み帯深部の未分化なマグマから晶出した灰長石巨晶に捕獲されているメルト包有物に着目し、沈み込み帯深部における揮発性成分の直接的な分析を試みた。EPMAによる定量分析の結果、佐渡島小木半島産灰長石巨晶に見出された苦鉄質メルト包有物中の硫黄はSO3換算で0.05-0.30 wt%、塩素濃度は0.01-0.12 wt% であった。さらに、Sr同位体組成分析の結果、灰長石巨晶の87Sr/86Srは0.70280-0.70340の比較的狭い範囲に収まることが判明した。この結果は、灰長石巨晶が同一起源のマグマから沈み込むスラブ由来の硫黄や塩素などの揮発性成分を取り込みながら晶出したことを示唆する。
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