研究課題
本研究課題は、1.レーザーアブレーション(LA)システムと誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて、鉱物中に取り込まれた地殻流体(流体包有物)の多元素同時分析法を確立し、2.その分析法を岩石-流体反応によって形成した交代岩といった天然の岩石に適用することで、岩石を形成した流体の元素運搬能力を明らかにすることを目的としている。これまでに、米国標準技術研究所ガラス標準試料を用いたLA-ICP-MSによる流体包有物の多元素同時分析を確立し、天然の岩石試料への適用を行なった。その結果、沈み込み帯のヒスイ輝石石英岩が形成される深さにおいて、流体から岩石へニオブ、ジルコニウムといったHFSE(high field strength element)が蓄積され、流体は相対的にLILE(large ion lithophile elements)やリチウム、ホウ素に富む化学組成を有することが明らかとなった。このような流体が沈み込み帯深部に運搬されることで、LILEに富みHFSEに乏しい化学的特徴をもつ島弧マグマが生じる可能性があり、流体の元素運搬能力がマグマの化学組成に重要な役割を果たすことを示している。本年度は、LAシステムの度々の不具合により、長期間、流体包有物分析を実施することができなかった。しかし、このときまでに本課題で提案する高純度石英ガラスを用いた標準試料調整法はガラス標準試料に比べ定量下限が小さくなると期待されるものの、利用可能なLAシステムが高出力レーザーに限定されることやレーザー条件設定の困難さといった幾つかの課題が残ると明らかとなった。そのため、高純度石英ガラスの加工法の検討をした。また、これまでに蓄積されている微小流体包有物の迅速多元素同時分析技術とその適用について総説論文をまとめ国内誌に発表を行った。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
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