研究課題/領域番号 |
16K20924
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
沖本 治哉 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 助教 (20510168)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | グラフェン / 層間化合物 / 電気化学剥離 |
研究実績の概要 |
新たな電極材料としてグラフェンは薄く透明性が高い材料として期待されている。特に、ドーパントを利用することで非常に導電性・透明性の高い電極になる事が知られている。 本研究では、電気化学インターカレーションによるグラフェン剥離を応用しグラフェン層間化合物の合成を目的とする。グラフェン層間にドーパントを挟み混んだグラフェン層間化合物はそのドーパントによる導電性向上だけでなくドーパントを外気に曝さない構造のため、その導電性の長期安定性も高い事が知られている。ただ、現状において多量生産技術が確立していない。そこで本研究ではグラフェン作製技術の1つである電気化学剥離法を応用しグラフェン層間化合物の多量生産とその応用を目指した。 初年度は、グラファイト層間化合物からの電気化学剥離法の最適化と液中における安定化を検討した。塩化鉄グラファイト層間化合物をベースとして電気化学剥離の条件(印加電圧、剥離用電解質)を決定した。同時に、電気化学剥離においてドーパントを挿入した層間において剥離が優先的に起こってしまうため収率の向上が難しい点が分かってきた。そこで、2点の方法を新たに取り入れた。1つは内包物が流出しないように高分子膜のようなものでグラファイト層間化合物を覆ってしまう方法ともう1つは、ドーパントになるような窒素・ボロンのような原子を化学結合によってつなげてしまう方法である。これらの方法は単にグラファイト層間化合物を電気化学剥離するよりもドーパント物質の流出を抑制する効果があることが分かった。 初年度は以上のように液中でグラフェン層間化合物の液中安定化及びドーパントの電気化学的な化学修飾を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の最大の課題は、液中におけるグラフェン層間化合物の安定化である。最も一般的な塩化鉄系グラファイト層間化合物の電気化学剥離の最適化は達成した。また、高分子をグラフェン表面に纏わせることによりドーパントの液中への流出を抑える事には成功したが、合成量が非常に少なくなってしまった。特に、2層のグラフェンで塩化鉄を挟みこんだ最も目標としているグラフェン層間化合物の合成量は電極にするには乏しい量である。そこで、秋以降に新たな対策としてドーパント原子を化学修飾にてグラフェン表面に電気化学的に修飾する方法を取り入れたが、合成条件・評価方法を確立するのが遅れて今に至っている。ただ高分子を利用してグラフェン層間化合物をある程度維持できるとの見込みが立ったので、導電性高分子など電極材料としての弊害にならないような高分子を利用してグラフェン層間化合物と導電性高分子の複合物として電極材料を作製することで十分に遅れを取り戻せると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究年度後半では、主にグラフェン層間化合物の電極としての特性評価を行なっていく。研究当初は単層のグラフェン層間化合物のみに絞っていたが、合成した層間化合物は複数層のグラフェン層の物質が多かったので、今後は数層のグラフェン層間化合物も含めて電極膜を作製し導電性や透過率の制御を行なっていく。さらに従来の予定通り導電性高分子とグラフェン層間化合物の複合電極材料の開発を進める。さらに、当初の計画にはなかったが、より安定的にグラフェン電極を作製する材料としてドーパントを層間で、化学結合によってドーパント分子をグラフェンに結合させた形態のグラフェンについても電気化学的な手法での合成に取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費については購入予定していた真空ライン及び電気炉については量産化のために申請をしていたが、まだ量産段階には達していないため、次年度への使用額が生じた。 旅費については、当初の予定より進捗が遅れたため一部の学会への参加を取りやめたため次年度使用額が生じた。 その他については初年度において論文投稿を検討していたが、間に合わなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
量産化には新たに真空ラインが必要なため次年度に購入する予定である。また、次年度は、今年度以上に外部機関での測定が必要と予定される事から、今年度のその他の部類の残額を測定に生じる経費に使用する予定である。
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