近年、グラフェンなどの原子層物質は導電性と透明性などの特徴から電極への応用が期待されている。層間に挿入物を内包したグラフェン層間化合物は挿入物の保護をしつつグラフェンの導電性を向上させることが期待できる。そこで、本研究は、グラフェン層間に他物質を挿入したグラフェン層間化合物状物質を液相大量合成し新奇電極材料として応用することを目的とした。グラフェン層間化合物の挿入物の多くは液中への溶解性や反応性が高い物質が多い。そのため液中への流出を阻害する方法を検討した。保護膜を検討し、低分子に比べ高分子膜がグラフェンを保護する機能が高い事が明らかとなった。またグラフェンエッジ部分などに官能基を修飾する方法も挿入物の流出を阻害する効果が期待されるためグラファイトに対する電気化学的な化学修飾法を開発した。化学修飾前にグラファイトに対して電気化学的な前処理を行なう事でグラフェン表面及びエッジ部分の化学反応性が向上することが分かった。また表面を覆う方法として表面への電気化学的析出反応を利用した膜形成に取り組んだ。具体的には窒素及び塩素を含む化合物の電気分解により窒化ホウ素に近い不溶性膜の作製を行なった。また近年グラフェンと同様に原子層物質として注目されるフォスフォレンに対しても上記の方法が有効かどうかを確かめた。まずフォスフォレンの液中安定性を評価し、層数に応じて液中安定性が変化することを明らかにした。さらにフォスフォレン表面の不安定性を逆に利用することで、シランカップリング剤を用いてフォスフォレン表面を容易に化学修飾し液中安定性を向上させる技術を確立した。現状では原子層物質表面の保護膜が導電性を著しく阻害するため優れた電極としての機能は見いだせていないが、本研究を通して得た様々な原子層物質の表面処理方法は、今後の原子層物質の研究に非常に有用であると期待される。
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