研究課題/領域番号 |
16K20926
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
大平 佳男 法政大学, 経済学部, 助教 (10649651)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 再生可能エネルギー / 太陽光発電 / バイオマス発電 / 相乗効果 / 資源の有効活用 / 外部効果 / ヒアリング調査 / 企業行動 |
研究実績の概要 |
固定価格買取制度実施以降、再生可能エネルギー(再エネ)が投資機会となり、企業が主体となって急速に普及した。しかし、買取価格の低下などで再エネ事業への投資インセンティブが低下し、その普及に陰りが見られる。そのような中でも再エネの普及を図るべく、再エネ事業が企業の本業にも利益をもたらすような相乗効果などについて研究を行っている。 本研究では再エネ事業を行っている企業(地域産業)などの業種と再エネ事業の関係に着目している。具体的には、再エネ事業の多い福島県を中心に、再エネ事業を行っている企業などへのヒアリング調査を行い、事業概要、参入プロセス・要因、連携の概要の把握を行っている。平成28年度に行ったヒアリング先としては、酒造業、農業(漢方薬)、農業(ピーマンなど)、専門学校、燃料小売業などである。参入プロセス・要因としては、トップダウン形式、新規事業として参入、廃棄物の有効活用(バイオマス発電)などとなっている。そしてヒアリング調査から地域産業の本業と再エネ事業の関係について知見を得ている。 地域産業と再エネ事業の連携では、地域産業の本業と再エネ事業の両方にメリットのある相乗効果のほか、資源の有効活用、生産技術を活用した再エネ事業(範囲の経済)、異なる産業間での連携(外部効果)のケースが挙げられ、その分類を行っている。そして地域産業と再エネ事業の連携による本業での利益・再エネ事業での利益について経済モデルを用いて分析を行っている(平成29年度学会発表予定)。 さらに新聞やホームページなどで資料調査を行い、再エネ事業を行っている事業者の概要、連携の分類、本業と再エネ事業での利益構造について整理しており、2017年度の研究で活用する。また、太陽光発電事業に参入している企業とその業種などの分析も行っており、電気機器卸売、電気工事など直接的に関連する業種で太陽光発電事業が多くなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に予定していた研究活動は、おおむね計画通りに進んでいる。太陽光発電協会の補助事業や新聞報道で公表されている再エネ(太陽光発電)事業について、無償のデータベースを利用して事業者の業種の分類を行い、論文などでその成果の一部を発表した。 ヒアリング調査に関して、福島県を中心に酒造業、農業(漢方薬)、農業(ピーマンなど)、専門学校、燃料小売業に調査を行い、さらに再エネ支援などを行っている白河地域再エネ推進協議会に対し、地域での再エネ(太陽光発電)事業を行っている企業の概要についてもヒアリング調査を実施した。ヒアリング先の選定は、業種、再エネの電源の種類、連携の状況などから判断した。また、他の同業者が再エネ事業に参入できるか否か(再エネを増やせるか否か)の判断材料になるよう、ヒアリング調査では可能な限り再エネ事業への参入経緯を確認している。 なお、ヒアリング調査に先立ち、平成28年度は連携事例の情報を収集し、どのような連携があるのかを分類することに重点を置いた。具体的には、資料調査として全国の連携事例を「環境ビジネス」「スマートジャパン」といったホームページや新聞などで情報収集し、本研究における連携の視点から分類・分析を行った。このデータをもとに平成29年度にヒアリング調査を増やしていく予定である。 平成29年度に実施計画をしていた経済モデルを用いた分析については、すでに平成29年6月の学会にエントリーして発表を予定している。連携による効果として、本業での利益拡大と再エネ事業での利益拡大とに分け、複数のパターンで比較を行い、再エネの普及について言及している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのヒアリング調査から連携の知見を得ており、その連携の多様性を広げるため、資料調査で行った連携事例を参考にヒアリング調査を行い、連携の効果を分類するとともに、利益構造を明らかにしていく。これにより連携による効果や利益構造の多様性を見出していく。 また、再エネ事業への参入プロセス・要因、地域産業の本業と再エネ事業の連携について、より一般化を目指し、アンケート調査を行う予定である。具体的には、太陽光発電協会の補助事業や新聞に掲載されている再エネ(太陽光発電)事業者に対し、参入経緯、担当部署、事業者の業種、連携状況(利潤構造)などについて問う予定である。その際、ヒアリング調査と関連を持たせるよう、質問事項を配慮する。ヒアリング調査やアンケート調査を通じて地域産業と再エネ事業の連携による様々な効果を検証して、地域産業の発展に貢献し再エネ事業の普及につながるような施策を検討していく。 そしてこれらの研究成果を再エネ事業の普及につなげるため、研究発表や福島県内の再エネ事業を推進する団体などへの報告を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、地域産業と再エネ事業の連携による相乗効果などを通じて、再エネの普及を目指すものであり、ヒアリング調査をベースに連携事例から様々な効果を見出すものとなっている。ヒアリング調査を中心に予算を使用する予定であり、限られた予算の中で効率的に調査を行うため、まずはヒアリング調査の対象になりうる地域産業と再エネ事業の連携事例の資料調査、連携状況の分析(利潤構造など)を重点的に行った。そのため、次年度使用額が生じた。これで得られた情報をもとに、ヒアリング調査を平成29年度に行う。 さらに平成28年度中に行った資料調査やヒアリング調査を通じて、ヒアリング調査だけでは稀有な事例・業種への偏り、サンプル数の少なさが課題となると考え、多種多様な業種での連携事例、再エネ事業への参入プロセスなどのデータが必要になると思い至った。そこで本分析の一般化の可能性に向けて、アンケート調査を検討するに至った。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、ヒアリング調査とアンケート調査を行う予定である。ヒアリング調査では、資料調査などで得られた連携事例(リスト化したもので81件)をもとに、業種、再エネの電源の種類、再エネ事業の概要などからヒアリング調査先を選出して、調査を行う。また、連携事例のリスト化は継続して行う。 アンケート調査では、太陽光発電協会の補助金採択事業者や福島民報に掲載された再エネ事業者などを対象に、再エネ事業への参入経緯、担当部署、事業者の業種、再エネ事業の概要と連携状況などについて問う計画である。
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