研究実績の概要 |
従来の研究では、標準宇宙論モデル用いて理論計算した宇宙背景放射や物質密度場と観測値を比較して、宇宙論パラメータを制限してきた。そして、新しいビッグバン元素合成モデルを検証する際、その制限値を標準として、整合性を検証してきた。これらの宇宙の晴れ上がり時代の標準モデルと、検証すべき新しいビッグバン元素合成の基本物理モデルとの間に全く相関がなければ、宇宙論パラメータを制限できることになる。さらに、どちらかに物理学的もしくは統計学的優位性があり、その制限値を基準としても問題ないなら、従来研究の方法でも正しく物理学の整合性を検証することが可能である。ただし、宇宙の諸現象が完全に独立であるという保証はどこにもなく、基準をどちらにするかが自明でない。よって、条件を絞らない限り、現実的な理論検証とは言い難い。 相対論的粒子エネルギー密度の一部が制限すべきフリーパラメータであり、そのパラメータにヘリウム量が依存する。また、原初磁場は我々の先行研究によって、宇宙背景放射や物質密度場に影響を与えることがわかっている。故に、宇宙の晴れ上がり時代の物理モデルと、検証すべき新しいビッグバン元素合成の物理モデルには相関がある。 平成30年度は、上記を考慮して、無理なく物理学的整合性を統計的に検証するために、一つのパラメータの組に対し、ビッグバン元素合成, 宇宙背景放射および物質密度場の理論値を同時に計算し、それぞれの観測と比較して得た尤度を合算して、パラメータを制限するためのプログラムコードの開発を進めた。
|