本研究では、社会ネットワーク分析の分野で開発されてきたネットワークにおける影響力の強いノードを特定する影響最大化アルゴリズムを応用し、ノードの故障やウィルス拡散に対する将来インターネットの頑健性を向上させる技術を開発することを目的としている。 本研究ではまず、影響最大化アルゴリズムの特性評価を実施した。その結果、従来有効であると考えられていた影響最大化の近似アルゴリズムは、ネットワークの不完全性が大きい場合に、その有効性を大きく低下させてしまうこと、一方、局所的な情報のみに基づく発見的アルゴリズムは不完全性に対する耐性が高いことを明らかにした。 次に、影響最大化アルゴリズムの特性評価の結果を踏まえ、影響最大化の発見的アルゴリズムを用いた、ネットワークのロバスト性向上手法を開発した。特に、ノードの故障ならびに攻撃に対するロバスト性を向上させるためのリンク追加アルゴリズムと、ウィルス拡散を抑制するための免疫付与アルゴリズムを開発した。2017年度までに、モデルを用いて人工的に生成したネットワークを用いた初期的な評価を実施し、これらのアルゴリズムの基本的な特性を評価した。 最終年度である2018年度には、将来インターネット環境を想定して、これまでに開発したアルゴリズムの有効性を評価した。特に、ネットワークの構造が部分的にしか得られない場合、およびネットワークの接続関係の情報に誤りが含まれる場合のアルゴリズムの有効性を評価した。その結果、開発したアルゴリズムは、ネットワークの情報が不完全であっても良好に動作することを示した。
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