1. 口唇唾液腺 (LSG)におけるNR4A2タンパク質発現解析:シェーグレン症候群 (SS)患者、IgG4関連疾患 (IgG4-RD)患者より摘出されたLSGと粘液嚢胞患者から摘出された正常部位のLSGの凍結切片におけるNR4A2の蛍光免疫染色 (IF)を行ったところ、SS患者のLSGに浸潤したCD4陽性T細胞において、 NR4A2は核内に特異的な発現を認めた。また、NR4A2はSS患者のLSGに浸潤したIL-17産生細胞において発現を認めた。 2. SS患者CD4陽性T細胞におけるNR4A2遺伝子発現とTh17分化の関連解析:SS患者では末梢血CD4陽性T細胞におけるNR4A2発現、Th17分化傾向が健常者より有意に亢進し、ベースラインのNR4A2発現量は分化誘導後のTh17細胞数と有意に正相関した。 3. Th17分化誘導下のCD4陽性T細胞におけるNR4A2のタンパク質発現と細胞内局在のIFによる解析:ナイーブCD4陽性T細胞 (健常者)では、NR4A2のタンパク質発現がTh17分化条件、Th0条件において経時的に有意な増加を示したが、両条件間に差はなかった。一方、Th17分化条件 (day 4)においてNR4A2は特異的に核内へ局在し、その核内発現率はTh1、Th0条件よりも有意に高値だった。また、SS患者では健常者と比較し、Th17分化条件 (day 4)におけるNR4A2核内発現率が有意に亢進した。Th17分化条件 (day 4)ではImportin阻害剤 (Importazole)によりNR4A2核内発現率は有意に低下し、IL-21発現、Th17細胞数は有意に減少した。 4. 意義:SSのCD4陽性T細胞では、NR4A2発現、核内移行が増加することでTh17分化が亢進し、病態に寄与する可能性が示され、これらの制御がSSの治療戦略の一つになりうる可能性が考えられた。
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