研究実績の概要 |
炎症性腸疾患(Inflammatory bowel disease; IBD)は、過剰な免疫応答により惹起される、消化管の炎症を主体とする疾患である。制御性T 細胞(Regulatory T cell; Treg)はIBD の発症を抑制しており、Treg 上の免疫受容体がその機能に重要な役割を果たしていることが知られている。本研究は、免疫活性化受容体DNAM-1 (DNAX accessory molecule-1/ CD226) のTreg上の役割を明らかにし、DNAM-1 のIBD の治療標的分子としての有用性を検討することを目的とした。 H29年:研究代表者は、DNAM-1とリガンドを共有するTIGIT (T cell immunoreceptor with Ig and ITIM domains)に着目し、TIGITに対する特異的中和抗体の樹立を行った。本抗体樹立の成果は国際誌に掲載された(Nakamura Yuho, Naito Keisuke, Yumi Yamashita-Kanemaru, et al. Monoclonal Antibodies in Immunodiagnosis and Immunotherapy, 10.1089/mab.2018.0001)。またTregにおけるDNAM-1の機能をin vivoで解析するため、Treg特異的DNAM-1遺伝子欠損マウスを樹立した。 期間全体を通して、Tregの機能を評価するin vitroの実験系、in vivoの病態モデルの樹立を行った。またTregにおけるDNAM-1の機能を解析する上で重要なTreg特異的DNAM-1遺伝子欠損マウスの樹立、またTIGITに対する特異的中和抗体の樹立を行った。今後はこれらの材料を用いて炎症性腸疾患への治療応用の検討をしていく予定である。
|