研究課題/領域番号 |
16K20938
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
津田 博司 筑波大学, 人文社会系, 助教 (30599387)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | オーストラリア / 連合王国 / 脱植民地化 / 共和制 / 君主制 |
研究実績の概要 |
今年度は、1972-75年のゴフ・ホイットラム政権期に焦点を定めて、オーストラリアにおける脱植民地化とイギリス的伝統をめぐる議論の分析に取り組んだ。その一環として、8月6日から28日にかけてオーストラリア(ニューサウスウェールズ州立図書館、オーストラリア国立図書館)、9月3日から20日にかけてイギリス(イギリス国立公文書館、大英図書館)での現地調査を実施した。 国民国家としての自立を志向する「新しいナショナリズム」を掲げたホイットラム政権期には、国家元首としてのイギリス国王の位置づけなどの「植民地主義の遺産」が批判的検討の対象となった。こうしたオーストラリアでの脱植民地化の動向に対して、1973・74年に行われたホイットラムによる訪英の際には、イギリスのエドワード・ヒース、ハロルド・ウィルソン両首相もまた(自国の側の帝国放棄・ヨーロッパ志向の流れに対応する)「地域主義」の帰結として理解を示しており、両国関係の円滑かつ漸進的な再編が合意された。今年度の研究からは、当初二国間関係の文脈から論じられていた君主制の問題が、1975年に起こった(イギリス政府は介在していない)連邦総督ボブ・カーによるホイットラム解任事件以降、あくまでオーストラリア国内における権力関係へと議論の焦点を移し、旧来の法制度を刷新するための手段として、明示的に共和制への移行を目指す運動が組織されるに至ったことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所定の研究実施計画に基づいて、1970年代のオーストラリアにおける脱植民地化をめぐる問題(とりわけ、イギリス側の帝国放棄・ヨーロッパ志向との連動)について、今後の研究につながる多くの知見を得ることができた。論文による成果発表は次年度以降に行うこととなるが、三つの年度にわたる研究課題の初年度として、順調に研究活動を遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は1980年代のイギリス入植200周年祭などを対象として、植民地時代に対する歴史的評価をめぐる議論を追跡する。今年度の研究を通じて明らかとなった1970年代以降の共和制論争の高まりを前提として、先住民解放運動を始めとする非イギリス系マイノリティの包摂がもたらした変容について、オーストラリアでの史料調査による解明を目指す。
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