研究課題/領域番号 |
16K20941
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
関口 雄一 山形大学, 地域教育文化学部, 講師 (70758820)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 攻撃行動 / 児童生徒 / 社会的適応 / 学級 |
研究実績の概要 |
平成29年度は,小中学生の攻撃行動の捉え方と攻撃行動,社会的適応の関連を検討すること,および攻撃行動の捉え方と攻撃行動の関連における学級の効果を検討することを目的とした調査研究を行った。まず,調査協力者は,小学5・6年生と中学1~3年生1010名(小学生285名,中学生725名)であった。調査内容は,小中学生に共通して「攻撃行動の捉え方尺度(H28年度に作成,「正当化」,「頻度・有用性」,「否定的認識」からなる)」,「小学生用P-R攻撃性質問紙(坂井・山崎,2004)」を用いた。そして小学生には,社会的適応の指標として「いじめ被害・学級不適応児童発見尺度(河村・田上,1997)」を使用した。一方,中学生には,「中学生用攻撃行動尺度(高橋・佐藤・野口・永作・嶋田,2009)」,社会的適応指標として「学校生活満足度尺度(河村,1999)」を用いた。 社会的適応との関連について,各変数間の相関係数を算出したところ,中学生においてのみ,攻撃行動の捉え方と攻撃行動,「学校生活満足度尺度」の間に有意な関連が示された。この結果より,学校段階が進むほど,攻撃的であることが社会的な適応を阻害する可能性が大きくなることが示された。 また,攻撃行動の捉え方と攻撃行動の関連における学級の効果を検討するため,マルチレベル分析を行った。その結果,攻撃行動の捉え方のうち「頻度・有用性」のみが攻撃行動に対して有意な正の関連を示した(表出性攻撃β=.57,関係性攻撃β=.85,いずれもp<.001)。すなわち,攻撃行動を頻繁に生じるものと捉えている学級の傾向と,そこに在籍する児童生徒の攻撃行動に関連があることが示された。この結果から,学級内の規範が,モデリングや社会的相互作用を通して,児童生徒の攻撃行動の形成にかかわっている可能性が示唆された。 さらに,平成29年度は3つの学会でのポスター発表も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は,1回の調査のみしか行えなかった。しかし,研究代表者の異動後の新たな環境においても,周辺の小中学校において調査依頼が可能であることを確認できたことが大きな成果であった。また,研究環境を整備するため,最新の統計ソフトを購入することができた。今後はそれらの機材を活かし,スムーズに研究計画を進めることができると考えられる。さらに,予定していた3つの学会におけるポスター発表も実施することができた。以上のことから,現在までの進捗状況の自己評価として,「(2)おおむね順調に進展している」を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
縦断的研究の調査依頼を引き続き行う。周辺自治体の教育委員会宛に調査依頼を行うことの許可を得ることができた後,各小中学校に調査依頼を行い,協力について検討してもらう予定である。また,研究代表者がスクールカウンセラーとして勤務する中学校において,H31年度の介入研究の協力依頼を行う。 また,得られた研究成果について,国内の雑誌論文に投稿を行う。加えて,2019年開催のSociety for Research in Child Developmentにて発表を行う。
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