研究課題
応用行動分析に基づく介護職員研修は、認知症の行動・心理症状(BPSD)の軽減に有効とされている。その研修の効果を維持するため、介護施設巡回型スタッフ・サポート・システム(SSS)を開発し、効果検証を行うことを目的とした。平成28年度は、特別支援教育分野において有効性が確かめられている巡回相談システムを応用して巡回型SSSの開発を行った。29年度も継続してシステムの改良を行うため、BPSDに対する応用行動分析のエビデンスについて、無作為化比較試験による研究のシステマティック・レビューを行い、有効性と課題を明らかにした。その結果明らかになった課題に対して、ポジティブな行動支援(PBS)を重視する形で研修内容の改良を行った。その後、改良した巡回型SSSを用いて、3か所の介護施設で研修を実施し、施設職員に対して自由記述のアンケート調査を行うことで、実行可能性を検討した。その結果、概ね肯定的な回答が得られた一方で、「行動の記録が負担になる」という課題が挙げられた。そのため30年度前半までにこの課題に対して、介護職員が使用できる行動記録のアプリケーションの開発を行った。また30年度には、このように改良を重ねてきた巡回型SSSの効果検証を行った。3か所の施設に介入を行い、入居者への効果の検証として主にNPIを用いたBPSDの評価と、QOL-ADによるQOL評価を行った。その結果、入居者のBPSDに改善がみられることがあった。またQOL-ADによる入居者のQOL評価ではBPSDが重い人の場合、自己評定が困難であったが、他者評定では「生活環境」に改善の評価が得られることがあった。今後は、実施してきた研修内容や本システムについて、広く他の介護施設においても実施できるように、研修資料をもとにテキストを作成し、普及活動に役立てる予定である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
認知療法研究
巻: 12 ページ: 23-30
こころの科学
巻: 199 ページ: 120-125