研究課題
脳マラリアのモデルであるネズミマラリア原虫Plasmodium berghei ANKA株(PbA)を感染させたC57BL/6(B6)マウスでは、小腸病態が生じるとともに腸内細菌叢が劇的に変化して腸内細菌バランス失調(dysbiosis)を起こす。またParasitemia(原虫の赤血球寄生率)および脳症状と相関が認められる菌が検出され、脳マラリアを含むマラリアの病態に腸内細菌が関与している可能性が示唆されたことから、本研究では、マラリア感染病態への腸内細菌の作用機序の解明することを目的としている。種々の菌の移植、餌等の投与条件を試みる中で、抗生物質の自由飲水投与により菌叢を顕著に変化させると、7~8割のB6マウスが脳症状を克服する条件を特定したことから、本年度は引き続き、この条件下における感染病態への腸内細菌の作用メカニズムの解明に取り組んだ。脳マラリア発症時である感染7日目に脾臓、パイエル板、腸間膜リンパ節、脳、末梢血からリンパ球を分離して検討を行った。パイエル板における変化に加え、PbA感染により対照群では、脳重量が増加して脳浮腫が生じるが、抗生剤投与群では、脳重量は有意に増加せず、脳浮腫が起こらないこと、そして、脳症状時に認められる末梢血中の白血球増加が抑制されていることを見出した。フローサイトメトリー解析を行った結果、PbA感染により対照群では、脾臓におけるNK細胞およびNKT細胞数の減少、末梢血におけるCD4TおよびCD8T細胞数が増加する一方、抗生剤投与群では、それらの変化が認められず、脾臓においてIFN-gamma産生CD8T細胞数が増加していた。これらのことから、脾臓等の臓器から末梢および脳へのリンパ球浸潤が抑制されて脳症状が軽症化していることが考えられ、腸内細菌による宿主免疫応答の調節によりPbA感染病態が形成されている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
抗生物質の自由飲水投与により菌叢を顕著に変化させる条件下における病態形成に関連する腸内細菌の特定にまでは至っていないが、本条件下におけるマラリア感染病態への腸内細菌の作用メカニズムの解明は予定通り進んでいる。
抗生物質の自由飲水投与により菌叢を顕著に変化させる条件下における感染病態への腸内細菌の作用メカニズムの解明をさらに推し進めるとともに、病態形成に関連する腸内細菌の特定を試みる。
抗生物質の自由飲水投与により菌叢を顕著に変化させる条件における腸内細菌叢の解析にまで至らなかったため、次年度使用額が生じた。予定通り、腸内細菌叢の解析のための実験動物および核酸抽出試薬等の購入に使用する。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
月刊新医療
巻: 7月号 ページ: 26
http://gunma-diversity.gunma-u.ac.jp/seeds_contents/taniguchi-tomoyo/