• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

地中熱利用の持続的な発展を実現する地下環境影響評価

研究課題

研究課題/領域番号 16K20954
研究機関埼玉大学

研究代表者

斎藤 健志  埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (30735668)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード地中熱利用 / 地下環境影響評価 / 地下水質 / 二酸化炭素フラックス
研究実績の概要

近年、新たな冷暖房システムとして、地下と熱交換を行う地中熱ヒートポンプが、世界的に普及し始めている。このシステムは、今後の持続的な利用と発展が望まれているが、その稼働に伴う地下環境への影響については研究例に乏しく、その詳細は明らかにされていない。本研究では、特に地下水質(重金属類ほか)と不飽和帯の温室効果ガス(主に、二酸化炭素)の動態に着目し、複数の稼働条件下でシステムを運転させ、地下水質と温室効果ガスの動態に、システムの利用が及ぼす影響を定量的に評価することを目的とした。
本年度は、昨年度に新設した不圧帯水層(深度約2 m付近)の観測井にて、自然状態での地下水質把握のため、月に数回程度の頻度で観測を継続し、また、被圧帯水層として、海成層(深度約17 m付近)と非海成層(深度約39 m付近)に設置されている観測井で、継続的なデータ蓄積のため、月に1回程度の頻度で観測を実施した。また、不飽和帯の温室効果ガスについては、特に二酸化炭素を対象とし、クローズドチャンバーにより地表面フラックスを、土壌内に埋設した採気チューブから土壌ガスを採取・濃度測定を行い、その土壌内フラックスをそれぞれ月に数回の頻度で観測した。2017年10月24日には、埋設されているU-tubeに約60℃の温水を連続的に循環させ、かなり強い冷房運転を想定した現場試験を開始した。その後、月に数回程度の高頻度で、地下水質と温室効果ガスの観測に取り組んできた。
被圧帯水層では、重金属類であるホウ素やヒ素などに、温度上昇に伴う濃度上昇傾向が確認された。また、新規に対象とした不圧帯水層でも、データはまだ少ないものの、温度上昇に伴うホウ素やヒ素などの濃度上昇傾向が認められた。不飽和帯における二酸化炭素の動態については、特に地表面フラックスに対して、浅層の温度が上昇するにつれて、二酸化炭素フラックスが上昇する傾向が得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画では、今年度、システムの冷房運転を停止し、試験現場を自然放冷条件下におく予定としていたが、現状では、かなり強い冷房運転を想定した現場試験を継続中である。このことは、特に新規に観測対象とした不圧帯水層では、十分なデータを得る必要性が極めて高いためである。貴重なデータが蓄積されていることもあり、おおむね順調に研究は進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

現在、少々、極端な運転条件で現場試験を進めている。今後、まずは自然放冷条件下において、地下水質(重金属類ほか)と不飽和帯の温室効果ガス(主に、二酸化炭素)の動態に着目して観測を進める。温度が元の自然状態に近い水準まで安定した後には、通常の冷暖房運転に近い稼働条件で現場試験を行い、上記の観測を進めて行く予定で考えている。

次年度使用額が生じた理由

今年度、通常のオフィスなどに近い冷暖房の稼働条件で運転できる地中熱ヒートポンプの制御システムを導入する予定であったが、すぐにそのシステムを稼働させる予定はなくなった。経年劣化等によってシステムが老朽化すると、修理費なども必要となる可能性があるため、使用する直前に導入する計画で考えている。
通常の冷暖房運転条件下で、地下環境影響評価を実施するため、上述した地中熱ヒートポンプの制御システムを導入する。残額の多くは、このシステムの導入費用にあてる予定で考えている。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] 温度変化が堆積物からのホウ素およびヒ素の溶出量とその存在形態に及ぼす影響2018

    • 著者名/発表者名
      斎藤健志、濱本昌一郎、竹村貴人、上島雅人、川本健、小松登志子
    • 雑誌名

      土木学会論文集G

      巻: 74 ページ: 8~15

    • DOI

      10.2208/jscejer.74.8

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Long-term monitoring of groundwater quality in Arakawa Lowland and Musashino Upland, Southern Kanto Plain, Central Japan2018

    • 著者名/発表者名
      Saito, T., Saito, H., Takemura, T., Spadini, L., Oxarango, L., Martins, J., Hamamoto, S., Ohkubo, S., Kawamoto, K., and Komatsu, T.
    • 雑誌名

      Proceedings of the 6th International Symposium on Advances in Civil and Environmental Engineering Practices for Sustainable Development (ACEPS-2018)

      巻: 6 ページ: 98-103

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Relationship between trace elements and depositional environments in shallow sediments: a case study from Southern Kanto Plain, Central Japan2017

    • 著者名/発表者名
      Ueshima, M., Takemura, T., Saito, T., Ito, Y., Hamamoto, S., Saito, H., and Komatsu, T.
    • 雑誌名

      Environmental Earth Sciences

      巻: 76 ページ: 633

    • DOI

      10.1007/s12665-017-6968-z

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A computationally efficient pseudo-3D model for the numerical analysis of borehole heat exchangers2017

    • 著者名/発表者名
      Brunetti, G., Saito, H., Saito, T., and Simunek, J.
    • 雑誌名

      Applied Energy

      巻: 208 ページ: 1113-1127

    • DOI

      10.1016/j.apenergy.2017.09.042

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] 荒川低地における原位置長期熱負荷・自然放冷試験中の浅層地下水の水質変化2017

    • 著者名/発表者名
      杉江瞭、斎藤健志、川本健、小松登志子
    • 雑誌名

      第23回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演集

      巻: 23 ページ: 3~6

  • [学会発表] Long-term monitoring of groundwater quality in Arakawa Lowland and Musashino Upland, Southern Kanto Plain, Central Japan2018

    • 著者名/発表者名
      Saito, T., Saito, H., Takemura, T., Spadini, L., Oxarango, L., Martins, J., Hamamoto, S., Ohkubo, S., Kawamoto, K., and Komatsu, T.
    • 学会等名
      6th International Symposium on Advances in Civil and Environmental Engineering Practices for Sustainable Development
    • 国際学会
  • [学会発表] Temperature effect on groundwater quality during in-situ, long-term subsurface heating and cooling in two confined aquifers in Kanto Area, Japan2017

    • 著者名/発表者名
      Saito, T., Sugie, R., Takemura, T., Ohkubo, S., Hamamoto, S., Moldrup, P., Kawamoto, K., and Komatsu, T.
    • 学会等名
      44th Annual Congress of the International Association of Hydrogeologists
    • 国際学会
  • [学会発表] 荒川低地における原位置長期熱負荷・自然放冷試験中の浅層地下水の水質変化2017

    • 著者名/発表者名
      杉江瞭、斎藤健志、川本健、小松登志子
    • 学会等名
      第23回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi