研究課題
近年、新たな冷暖房システムとして、地下と熱交換を行う地中熱ヒートポンプが、世界的に普及し始めている。このシステムは、今後の持続的な利用と発展が望まれているが、その稼働に伴う地下環境への影響については研究例に乏しく、その詳細は明らかにされていない。本研究では、特に地下水質(重金属類ほか)と不飽和帯の温室効果ガス(主に、二酸化炭素)の動態に着目し、複数の稼働条件下でシステムを運転させ、地下水質と温室効果ガスの動態に、システムの利用が及ぼす影響を定量的に評価することを目的とした。本年度は、昨年度に新設した不圧帯水層(深度約2 m付近)の観測井にて、自然状態での地下水質把握のため、月に数回程度の頻度で観測を継続し、また、被圧帯水層として、海成層(深度約17 m付近)と非海成層(深度約39 m付近)に設置されている観測井で、継続的なデータ蓄積のため、月に1回程度の頻度で観測を実施した。また、不飽和帯の温室効果ガスについては、特に二酸化炭素を対象とし、クローズドチャンバーにより地表面フラックスを、土壌内に埋設した採気チューブから土壌ガスを採取・濃度測定を行い、その土壌内フラックスをそれぞれ月に数回の頻度で観測した。2017年10月24日には、埋設されているU-tubeに約60℃の温水を連続的に循環させ、かなり強い冷房運転を想定した現場試験を開始した。その後、月に数回程度の高頻度で、地下水質と温室効果ガスの観測に取り組んできた。被圧帯水層では、重金属類であるホウ素やヒ素などに、温度上昇に伴う濃度上昇傾向が確認された。また、新規に対象とした不圧帯水層でも、データはまだ少ないものの、温度上昇に伴うホウ素やヒ素などの濃度上昇傾向が認められた。不飽和帯における二酸化炭素の動態については、特に地表面フラックスに対して、浅層の温度が上昇するにつれて、二酸化炭素フラックスが上昇する傾向が得られた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画では、今年度、システムの冷房運転を停止し、試験現場を自然放冷条件下におく予定としていたが、現状では、かなり強い冷房運転を想定した現場試験を継続中である。このことは、特に新規に観測対象とした不圧帯水層では、十分なデータを得る必要性が極めて高いためである。貴重なデータが蓄積されていることもあり、おおむね順調に研究は進展していると考えている。
現在、少々、極端な運転条件で現場試験を進めている。今後、まずは自然放冷条件下において、地下水質(重金属類ほか)と不飽和帯の温室効果ガス(主に、二酸化炭素)の動態に着目して観測を進める。温度が元の自然状態に近い水準まで安定した後には、通常の冷暖房運転に近い稼働条件で現場試験を行い、上記の観測を進めて行く予定で考えている。
今年度、通常のオフィスなどに近い冷暖房の稼働条件で運転できる地中熱ヒートポンプの制御システムを導入する予定であったが、すぐにそのシステムを稼働させる予定はなくなった。経年劣化等によってシステムが老朽化すると、修理費なども必要となる可能性があるため、使用する直前に導入する計画で考えている。通常の冷暖房運転条件下で、地下環境影響評価を実施するため、上述した地中熱ヒートポンプの制御システムを導入する。残額の多くは、このシステムの導入費用にあてる予定で考えている。
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