研究課題/領域番号 |
16K20955
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
松下 隆彦 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (10435745)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プロドラッグ / ターゲッティング |
研究実績の概要 |
インフルエンザウイルスや感染細胞の表面にはシアル酸を分解する酵素ノイラミニダーゼが存在する。本研究は、ノイラミニダーゼの作用でシアル酸が分解されることを引き金に、膜溶解性ペプチドが遊離することで、反応場近傍にあるウイルスや感染細胞を破壊する人工ペプチドの構築を目標としている。 シアル酸とリジン側鎖をリンカーで結合した化合物は昨年度合成した。今年度は本化合物のノイラミニダーゼ感受性試験を行った。その結果、ノイラミニダーゼ存在下ではシアル酸が切断されたのち、リンカーが崩壊してリジン側鎖が遊離することを確認した。このことから、本化合物をビルディングブロックに用いてペプチドを構築すれば、ペプチドも同様のノイラミニダーゼ感受性を発揮するものと思われる。 意図した遊離機構の作動が確認できたことから、今度は遊離効率比較のためにリンカー構造の異なるシアル酸-リジン誘導体の合成を試みた。合成工程の半ばで極端に収率の低いステップが重なったことから、中間体を十分量確保できず合成を断念した。これにより、以降の検討は先に合成したリンカー構造のみを用いて進めることとした。 ノイラミニダーゼが基質のシアル酸を切断してからアミン化合物が遊離するまでの過程を詳しく追跡するため、リジンを発色基質に置き換えたモデル化合物を新たに合成した。本化合物をノイラミニダーゼで処理すると、時間の経過とともに発色が強くなっていったことから、ノイラミニダーゼ存在下での発色基質の遊離が示唆された。現在、詳細な解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ノイラミニダーゼ応答試験は計画どおり実施し、意図した仕組みが作動することが確認できた。平成28年度中より取り組んでいたリンカー構造が異なるシアル酸-リジン誘導体の合成は、極端な低収率のために平成29年度途中で断念した。この検討に想定外の時間を要したこと、およびノイラミニダーゼの反応追跡に用いる新たなモデル基質を合成したため、平成29年中に予定していたペプチド合成には着手できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、前年度に引き続きモデル基質を用いたノイラミニダーゼの反応解析を行うことで、その詳細を明らかにする。また、平成28年度に合成したビルディングブロックを用いることで、ペプチド側鎖にシアル酸担持リンカーを結合した人工ペプチドを構築し、ノイラミニダーゼの有無による膜溶解性のちがいを蛍光物質内包リポソームを使って比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
リンカー構造の異なるシアル酸-リジン誘導体の合成に取り組んだところ、合成困難な工程があり、反応条件の検討に多くの時間を要した。そのため、シアル酸担持リンカーを結合したペプチド合成まで着手できず、次年度に実施を持ち越した。これにより、ペプチド合成と機能解析を実施するための次年度使用額が生じた。
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