研究課題
成体海馬由来の神経幹細胞の長期培養を可能とする分子メカニズムの解明、並びに大量培養された神経幹細胞の治療応用への可能性を模索すべく以下の研究を行った。1) 通常培養条件下における成体海馬由来NSC の機能消失が、p38αの阻害により抑制される分子メカニズムを明らかにすべく、WT 群(2 継代目)と長期維持したp38α-KO 群(60 継代目)、p38α阻害剤添加群(60 継代目)の成体海馬由来NSC からtotal RNA の調製を試みた。長期維持されたNSCは分化能、増殖能等が安定しており解析に供するに十分信頼性のあると考えられる細胞が入手できた一方で、WT群のNSCの分化能、増殖能はサンプリング毎に安定せず、これを対照群として用いることの妥当性が疑われたため、サンプリングからNSCの回収までの行程の検討を行い再現性の高いWT群の調整を試みた。その結果、WT群の分化能、増殖能は継代のタイミングに大きく影響されることが見いだされた。これらを踏まえ今後、介在分子の網羅的解析を行っていく。2) In vitro 増殖されたNSCに対し蛍光タンパク質を安定導入し、これら標識されたNSCを大脳障害モデルに対し移植した。その結果、標識されたNSCの一部は傷害部位に生着し、神経に分化することが見いだされた。また、移植後の長期間にわたる観察では腫瘍化は認めらなかった。3) 1)における野生型成体海馬由来の神経幹細胞の機能維持に対する検討の中で、細胞培養に用いる細胞の足場がその機能維持に重要な役割を果たしうることを見いだし野生型由来であるにもかかわらず、長期培養が可能となることを確認した。
3: やや遅れている
安定したWT群を得るための検討に予定より時間を費やしてしまった。さらにそれら検討から新たな知見を得るに至りそちらの解析に進めてしまったため、当初の計画から多少の遅れが生じている。
上述の遅れの原因に関して現在はおおむね解消されているため、今後これらの遅れは取り戻せるものと考えている。また、非遺伝、非薬理的な神経幹細胞の機能維持に関する情報も併せて解析することにより、より精度の高い情報が得られるものと考えている。
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frontiers in Pharmacology
巻: 8 ページ: 72
10.3389/fphar.2017.00072.