成体海馬由来の神経幹細胞の長期培養を可能とする分子メカニズムの解明、並びに大量培養された神経幹細胞の治療応用への可能性を模索すべく以下の研究を行った。 昨年度、野生型成体海馬由来の神経幹細胞の機能維持に対する検討の中で、細胞培養に用いる細胞の足場がその機能維持に重要な役割を果たしうることを見いだし野生型由来であるにもかかわらず、長期培養が可能となることを確認した。 今年度は研究計画を一部変更し、神経幹細胞の機能維持に関わる、より詳細な情報を得るため、昨年度見いだした特殊な足場素材を用いて培養を行うことにより可能となる神経幹細胞の長期培養の背景に存在する分子メカニズムの情報を同時に得るべく、足場素材を用いて培養した神経幹細胞のプロファイルを詳細に検討した。 その結果、この方法を用いることにより神経幹細胞は少なくとも数ヶ月培養可能かつ、長期培養した神経幹細胞は幹細胞マーカー陽性であり、少なくとも神経、アストロサイト、オリゴデンドロサイトのマーカー陽性細胞に分化しうることを見いだした。すなわち、p38の機能阻害と同等もしくはそれ以上に幹細胞性を維持しうることが示唆された。また、足場素材を重層することにより、神経幹細胞を重層された新しい足場に移動させうることも見いだされた。これら新しい足場に転移した神経幹細胞も、元の足場上の神経幹細胞と同様に幹細胞性を維持していることが確認された。これらは、この素材を用いることによって省スペースでの大量培養を可能とする可能性を示唆していると考えられる。
|