パーキンソン病、レビー小体型認知症ではα-synucleinが凝集・異常蓄積している。近年凝集性を有したα-synucleinが細胞外腔を介し細胞間を移行する、細胞間伝播の現象が見いだされ、上記疾患における規則性をもったα-synuclein病理との関連が注目を集めている。α-Synucleinは正常には神経細胞のプレシナプスに局在する可溶性の高い細胞内タンパク質であるが、細胞外にも存在することが明らかになってきた。そこで研究代表者はこのようなα-synucleinの分泌機構を明らかにすることを目標として本研究を遂行した。研究代表者はこれまでに初代培養神経細胞、in vivo microdialysisの実験系において、神経活動を亢進あるいは抑制する薬理学的手法を適用し、内因性のa-synuclein分泌の大部分が神経活動依存的な制御を受けていること、特にグルタミン酸作動性神経伝達によって変動すること、プレシナプス活動と関連すること、を明らかにしてきた。これらの知見に加え平成29年度には活動依存的なa-synuclein分泌は海馬だけでなく、線条体においても生じていることを見いだした。またin vivo microdialysisを用いた実験において、脳間質液に分泌をうけたα-synucleinは単量体とは異なる、60kDa程度の大きさの高分子量体として存在していることも明らかにした。近年細胞外に存在するα-synucleinが細胞間伝播を生じたり、毒性を発揮したり、神経活動を制御することが明らかになりつつあるが、本研究成果はこのようなα-synucleinの細胞外機能が神経活動依存的に変化する可能性を示すものと考えられる。
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