研究課題/領域番号 |
16K20971
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
本間 健太郎 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (90633371)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 都市計画・建築計画 / 観光 / ジオタグ / マイクロSNSデータ |
研究実績の概要 |
本年度は,研究計画におおむね沿って以下の研究を行った. [1] 旅行者の時間的空間的な集合パターンの解析:前年度の研究で得られた,国内で撮影された約870万件のFlickr写真データを用い,数々な空間統計的な解析を行った.全ての写真は,a撮影場所(ジオタグ),b撮影時間,c撮影内容(タグ) の情報を持っており,また投稿者の撮影履歴から,d居住国 を推定している.これに対応して,a建物レベルから全国レベルまでの多様なスケールでの地域分析を行ったうえで,b撮影時間ごと,cタグ意味クラスタごと,d居住国ごとに,撮影されがちな場所を明らかにした.そのうえでデータを正規化して上記の組み合わせによる総合的な統計分析を行った.それに基づき観光エリア形状の分析やホットスポット抽出を行い,従来の調査票データでは拾えない観光動向を明らかにした. [2]観光地選択行動と観光投資の相互作用モデリング:観光地の盛衰変化およびその均衡分布を再現するモデルを構築し分析した.「魅力ある地域には多数の観光客が来るので,観光資源に投資する余裕ができ,さらに来客数が増える」という好循環が現実には存在し,逆の悪循環も存在する.そのような時間発展を扱う既往モデルにバランスメカニズムがある.ただしその想定対象は商業地であり,地域間の類似度を扱えない.しかし観光地には,例えば「スキー場どうしは競合関係にあるが,スキー場と温泉地は共生関係にもなり得る」という特徴があるので,地域の種別や類似性を明示的に扱う必要がある.そこでバランスメカニズムをNLモデルに無矛盾に拡張する手法を開発し,観光地にも適用できるようにした.それに基づくシミュレーションを行い,多様な観光地分布の動学原理に対する説明を得ることに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
両項目とも当初想定していたレベルの研究結果を得た. 観光資源の地理分布を示す既存データは色々なものが存在するが,上記[1]の研究はそれを,aミクロスケールで,b時系列的な流行を追えるようにし,c興味内容(例えば「花見」や「水辺」など)別に分解したうえで,dお国柄による興味の違いを解明したものといえる.個別の興味深い知見を得ることができたと同時に,研究方法の有効性を示すことができた. 上記[2]については,今後の観光振興や魅力的な観光地域創出のために本質的な提言を行うべく,当初予定していた観光地選択行動の本格的なモデリングの前に,理論上の核心部分についての研究を進めた.具体的には,需要側(旅行者)だけでなく供給側(観光施設オーナー)にも着目した.そして観光投資の概念を導入した理論モデルの数理的検討を行い,最終的に需給両者の相互作用を再現するモデルを構築することに成功した.これは従来のバランスメカニズム理論を拡張したという学術上の成果だけでなく,最終年度の研究を遂行するためにも有用な成果といえる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度についても,着実な成果をあげるべく引き続き研究を行う.具体的には,上記[1]に基づく観光行動の精緻モデルを組み上げ,旅行者の選択行動を再現することを目指す.またこれを上記[2]で構築した相互作用モデルにも組み込み,観光客の動態と観光地の盛衰の相互ダイナミズムを解明することを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
謝金支払いを要するデータ整理を行わなかったため,次年度使用額が生じている.次年度では,データ整理や学会発表などのためにを助成金を要する.
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