研究課題
申請者らは、同種造血幹細胞移植後に、ドナー造血を維持しながらも、骨髄不全を呈する患者(ドナー由来骨髄不全症候群)を同定することに成功した。本研究は、ドナー由来骨髄不全症候群患者の臨床検体を用いて、骨髄不全症候群が発症する分子生物学的な病態を明らかにすることを目的とする。骨髄不全は、体細胞変異を伴うクローン性造血(細胞内の異常)と自己免疫学的な異常(細胞外の異常)の両方が発症機序として想定されているが、この両者の関連性は明らかではない。平成29年度は、平成28年度に引き続きドナー由来骨髄不全症候群を対象に体細胞変異の解析を中心に解析を進めた。患者とドナーをペアとして全エクソン解析を行い、非同義体細胞変異を同定した。対象とした4症例分の解析では、同定された体細胞変異は全て非常に低いアレル頻度(5%程度)であった。このことから、ドナー由来骨髄不全症候群は、微小なクローン性造血で特徴づけられることが分かった。一方、本年度は、本疾患発症の機序として自己免疫学的異常の関与を検討するため、移植前・移植後の患者検体を用いてT細胞レパトア解析を行った。T細胞のクローナリティーは患者ごと、あるいは移植前後で変化を示したが、一定の傾向を示さなかった。また、移植前後で同じレパトアをもつT細胞の同定を試みたが、同定は困難であった。本研究において、ドナー由来骨髄不全症候群におけるT細胞性自己免疫学的機序の関与を明らかにすることはできなかった。
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臨床血液
巻: 58 ページ: 1031~1037
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PLOS Genetics
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