研究実績の概要 |
患者転倒リスク判別ロジックは、現場にとって本当に有用なのかどうかについて、電子カルテに実装した患者転倒リスク判別ツールの使用状況や患者データを使って検証を行った。患者毎の繰り返しレコードや病棟・診療科の入れ子構造における分析に適した、マルチレベルロジスティック回帰分析を採用し、調整変数に、患者の基本属性(年齢・性別)、病棟、診療科、看護必要度項目、等の、電子カルテ蓄積データを使用して分析を行った。 その結果、ツールの電子カルテ実装前 対 実装後 の転倒発生確率(287,272人日 対 285,843人日)は、オッズ比0.83(95% CI: 0.72-0.95)となり、転倒発生確率は統計的有意に低下した。また実装後期間におけるツール非使用患者 対 使用患者 の転倒発生確率(142,252人日 対 143,691人日)は、オッズ比1.12 (95% CI: 0.91-1.37)となり、転倒発生確率は不変であった。 導入後期間で転倒発生件数が減ったのはツールによる結果である可能性があるが、使用した後の状態の患者でも使用していない状態の患者でも転倒しやすさに差があると言えない事から、ツールによる効果ではなく「データに出てきていない現場の意識の変化や他の対策」のおかげである可能性があると考える。 「データに出てきていない現場の意識の変化や他の対策」を拾えるようにするためには、行為の標準化と記録の標準化による可視化を進める事とデータ解析のために結果値のバリエーションを可能な限り集める事が必要と考える。 また本研究の成果の一部を、一般向けの書籍として分担執筆した。
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