研究実績の概要 |
2019年度は前年度までの研究を踏まえ、患者転倒・転落という事象を俯瞰的に分析し把握する事に主眼をおいた研究を実施した。 転倒や転落は瞬間的に発生する事故であり、患者本人・家族・医療者による状況認識の違いに左右される事から、臨床現場においては曖昧に認識・分類されている概念である可能性がある。筆者らは、臨床現場のスタッフは転倒と転落を区別して認識できているのかどうかを実験的に検証するため、2,608件の転倒報告書と472件の転落報告書、計3,080件の文書を材料に、自然言語処理技術と機械学習手法(Support Vector MachineとDeep Learning)を用いて分類器の構築を試みた結果、好成績な分類器を構築することができなかった。この結果は転倒報告書と転落報告書は文書として区別できない、すなわち臨床現場のスタッフにおける、転倒と転落に関する認識が曖昧で区別されていない可能性を示唆すると考える。以上の内容を論文としてまとめ、国際看護情報学会(14th International Congress on Nursing Informatics)にてFull Paperとして発表した。 また、日本転倒予防学会員とともに臨床現場における患者転倒のリスク評価に関する検討を行い、当該学会誌において論文として発表した他、日本リハビリテーション医学会の学会誌上にて臨床データの二次利用による患者転倒・転落に関する研究を総説論文を発表した。
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