本研究は、ベトナム農村社会における非農業部門の役割に着目している。メコンデルタ北東部、かつて稲作が卓越し2010年代から果樹栽培が展開している地域を調査地に、全国的な工業化・都市化のもとで、地域農村社会がどのように変容しているのかを考察した。調査村は、内戦終結以来、人口増加に伴う土地零細化に対応しつつ、戦略的な作物転換と小規模畜産の導入によって発展してきた。現在、若年層の教育水準の向上とともにかれらの非農業常雇型就労が進行し、農業労働力不足に直面しつつも、過去の貯蓄や子弟の非農業就労による安定性などを複合的に基礎にしつつ、高投入・高収益の潜在的リスクの高い果樹栽培への特化が進行している。
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