本研究では,マイクロ流体デバイスを利用したフロー系のプロセスによる四分岐ポリエチレングリコール(tetra-PEG)ハイドロゲルマイクロカプセルの連続調製法を構築した。マイクロ流路で形成される単分散水滴内での「相分離(水性二相形成)」とtetra-PEGマクロモノマーの自発的な「末端カップリング反応」を利用することによって,原料溶液をマイクロ空間で混合するだけで ハイドロゲルマイクロカプセルを得ることに成功した。目的とするコアシェル型のハイドロゲルマイクロカプセルを得るためには,系の界面張力を調節することによってコアシェル型の水性二相液滴を得るだけでなく,末端カップリング反応によるシェル相のゲル化を迅速に起こすことが重要であることがわかった。この提案したマイクロカプセル調製法では,マイクロ流路の送液条件や分散相の組成を変えることで単分散性を維持したまま,マイクロカプセルの直径と膜厚をそれぞれ制御できることがわかった。 一方で,コアシェル型の水性二相液滴を形成した後,ゲル化反応をゆっくりと進行すると液滴内の構造変化が誘起され,半球型のハイドロゲル粒子が形成されることを見いだした。この半球型のハイドロゲル微粒子調製は当初の予定に計画していなかったが,新規な異形ゲル微粒子調製法として学術的に興味深い現象であると考えている。 コアシェル型のハイドロゲルマイクロカプセルについて,モデル蛍光分子を用いたカプセル膜の物質透過性試験をしたところ,分子区画能(半透膜性)を有していることが確認できた。この結果より,本調製プロセスで得られるtetra-PEGハイドロゲルマイクロカプセルは細胞の移植材料やバイオリアクターとして応用できる可能性が示唆された。
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