研究課題/領域番号 |
16K20988
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
郷右近 英臣 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (10757777)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リモートセンシング / 被害把握 / 地震 / 津波 / 災害関連業務 / 社会実装 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、2011年東北地方太平洋沖地震津波の被災地を捉えた1.X-バンド合成開口レーダによる津波浸水域抽出手法の高度化、2.L-バンド合成開口レーダによる建物被害推計手法の高度化、3.災害リモートセンシングの社会実装についての研究の3つの技術課題に取り組んだ。 1.では、既往の研究手法では、まだ十分な精度で抽出する事ができていない、「一度津波により浸水した後に水が引いた領域」において、津波被災前後のTerraSAR-Xによる、抽出手法の開発に取り組んだ。H28年度までの進捗では、単偏波の画像による抽出はまだ困難な状況にあり、今後、光学画像を組み合わせた解析に発展させていく必要がある事がわかった。 2.では、申請者自身がこれまでに開発している、L-バンド合成開口レーダによる津波被災地の建物被害推計手法を、他地域で適用するための条件の整理や、実際に本手法を他地域に適用し、その精度検証を行った。本研究の成果は、査読付論文として国際学術誌に掲載された。また、被害推計を高精度で行うための、空間スケールについてパラメータスタディを行い、解析対象範囲内に含まれる建物棟数密度と、最終的に得られる建物被害推計精度の関係について、分析を行った。その研究成果は査読付論文として国内学術誌に掲載された。 3.では、災害時、行政のどの部署が、どの時間・空間スケールで災害リモートセンシング技術を必要とするかについて、検討を行った。本件については、まだ行政への聞き取り調査の状況はまだまだ不十分であり、平成29年度に積極的に課題に取り組んで行く必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究プロジェクトでは、平成28年度に、1.リモートセンシングによる自然災害被災地の建物被害把握手法の高度化、2.様々なセンサの相互利用による、信頼性の高い被害情報の抽出手法の開発、平成29年度に、3.地方自治体の災害関連業務と要求分析による、効果的なリモートセンシングの活用手法の検討、4.リモートセンシングによる災害関連業務の効率化の検証、の計4課題に取り組む事になっている。 1のリモートセンシング技術の高度化については、当初計画していた、UAVによる解析はまだ十分に行えていないものの、衛星リモートセンシングによる解析手法の高度化は当初の予定以上に進んでおり、良好な成果が得られている。その一方で、当初計画をしていたUAVの撮影画像による解析については、まだ十分に進んでいない。また、2.の様々なセンサの相互利用による被害情報の抽出手法の開発では、L-バンド合成開口レーダによる解析手法の研究や、光学画像単体での画像解析は進んでいるが、これら複数のセンサを組み合わせた解析はまだ十分に進んでいない。3.4.については、平成29年度に着手の予定であったが、前倒しで、調査内容の検討や調査対象組織の洗い出しを行っているため、当初の予定より早めに進んでいる。 当初の計画より進んでいる箇所と遅れている箇所の両者を総合的に判断し、当初の計画よりやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り進んでいない、UAVによる解析手法の開発と、複数のセンサを組み合わせた解析手法の開発については、年度の早い段階で着手する。これまでに、合成開口レーダよりも光学画像を使用した方が被害を効果的に抽出できる地表条件と、光学画像よりも合成開口レーダを使用した方が良い地表条件の分析は終えている。これらの地表条件を判定する手法の開発に取り組む事により、技術課題の解決を図る。 また、UAVによる被害抽出手法の開発については、地方自治体の災害関連業務のリモートセンシング技術に対する要求分析を行った後に、UAVを有効に活用できる災害対応業務について検討を行い、そのために必要な技術を開発するという視点から、研究を進めて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、実際に地震・津波被災地の現地調査や、災害対応関連業務の調査のための出張旅費を計上していたが、現地調査よりも優先順位の高い、解析手法の開発に重点を置いたため、当初の予定よりも少ない使用額となってしまった。また、UAVによる解析手法の開発についても、当初の計画よりも進行が遅れているために、当初の予定よりも物品費に使用した費用は少なくなっている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、平成28年度に計画通り進められなかった研究を進めるのに加え、地方自治体の災害関連業務の調査を重点的に進めて行くために、研究費を使用させていただく予定である。
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