本研究課題は、生態学的観点から(1)乳幼児が実際に生活している環境での発達のライフログデータ取得し構造化すること、(2)ライフログデータの分析を通して、環境的資源と原初的コミュニケーションの発達的な関わりを解明することを目的としている。以上の目的に対して、研究期間内の具体的な目標を「行動観察からの原初的コミュニケーション場面のライフログデータの構築」「原初的コミュニケーション発達を支える環境的資源の解明」「原初的コミュニケーション発達の総合的理解のための視点の検討」とした。 本件研究では父母と1名の子どもが生活する2家庭において縦断的にライフログデータを取得している。 本年度は、当初研究代表者の研究機関の変更に伴う研究環境の整備があった。原初的コミュニケーションを住環境と共に分析するために、場所と併せたデータの可視化を行うとともに、場所の記述単位として、一般的な住環境の記述である間取りと家具の分類と合わせて住環境の生態学的な分類法を用いて分析を行った。 その結果、養育環境としてのリビングルームは、そこで育つ子どもだけの環境ではなく、養育者の日常生活のタスクを可能にするようレイアウトされている必要があり、子どもの発達はその絶え間ない探索と調整を養育者に課すことが明らかとなった。こうした分析結果の一部は、第16回日本質的心理学会大会において「初期コミュニケーション発達と関係する複数の物のレイアウトの分析」として報告された。
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