研究実績の概要 |
本年度の成果: 細胞接着分子 CADM1 による,肺高悪性度神経内分泌癌(high-grade neuroendocrine carcinoma, HGNEC:小細胞癌および大細胞神経内分泌癌)の増殖や浸潤,転移などの悪性化機序を解明することを目的として,主に HGNEC ノックアウト(KO)株の同所(肺)移植実験や,(2)転移実験を実施した. (1)大細胞神経内分泌癌の特徴を有すると考えられる VMRC-LCD(Cancer Sci. 2016)を親株として,昨年度,CADM1 KO 株の皮下移植実験を行ったが,CADM1 の発現の有無により,腫瘍形成能や増殖能に有意差は見い出せなかった.以前,HGNEC の手術標本を用いた免疫組織化学的な解析にて,CADM1 の発現が有意な予後不良因子であることに加え,リンパ節転移の有無に有意な増加を見出していた.そこで,小細胞肺癌株の転移モデルの論文を参考として,同所(肺)移植実験を実施した.しかし,CADM1 の発現の有無に関わらず,VMRC-LCD 株では腫瘍を形成することが出来なかった.原因としては,細胞株の増殖速度が比較的緩徐である点や,注入した細胞数が少なかった点などが考えられた. (2)小細胞肺癌の細胞株として知られているが,CADM1 の発現を欠損する,SBC5 を親株として,CADM1 を発現する株を作製した.マウス尾静注による転移実験を行ったところ,CADM1 発現株では,肺に形成される腫瘍結節数が有意に増加した. 意義: 細胞株に伴う差は否定しきれないが,CADM1 の発現が転移能の促進に関与している可能性が示唆される.
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