研究課題/領域番号 |
16K20997
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田久保 耕 東京大学, 物性研究所, 特任研究員 (30738365)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光誘起相転移ダイナミクス / 遷移金属化合物 / 強相関電子 / 共鳴軟X線散乱 / X線磁気円偏光二色性 |
研究実績の概要 |
本研究は、非従来型の超伝導やトポロジカルな電子物性などの新奇量子現象を示す遷移金属カルコゲナイドの電子状態を、放射光光源を利用した時間分解型の共鳴軟X線散乱(RSXS)及びX線円偏光磁気二色性(XMCD)という新手法によって、ダイナミクスの観点から解明することが目的である。時間分解型の両手法により、超高速の光誘起相転移を観測する。RSXS及びXMCD測定は物質の微小な電荷や磁気秩序を精密に測定できる手法であり、放射光技術の発展とともに世界中で研究が進んでいる。 本年度の研究により、時間分解RSXS及びXMCD測定装置およびその測定システムが完成した。同装置は時間分解型の両手法を測定できる日本初の装置である。 特に、磁性材料FePt薄膜の時間分解円偏光磁気二色性測定を行い、超高速の光誘起相転移ダイナミクスの観測に成功した。フェムト秒レーザー照射後50ピコ秒以内にFeサイトで光誘起の消磁(相転移)が生じ、150ピコ秒程度の緩和時間で磁化が回復していく様子が、Fe 内殻L吸収端を用いたXMCD測定により明らかとなった。本測定は歪みの少ない電子収量法を用いて行った。Fe L2端、L3端で同様のダイナミクスが観測され、XMCD測定における電子収量法の有用性が明らかとなった。XMCD変化の光励起強度依存性には閾値的な振る舞いが観測された。このことから、この光誘起現象に協同効果が働いていることが示唆される。 遷移金属カルコゲナイドの示す光誘起相転移の研究に関しても、現在時間分解共鳴軟X線散乱測定を複数計画中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究において、時間分解共鳴軟X線散乱(RSXS)及及び円偏光磁気二色性(XMCD)測定装置およびその測定システムをが完成した。特に検出器としてマルチチャンネルプレートを導入することにより、時間分解X線吸収測定において電子収量法、蛍光収量法の2つの手法を選択的に用いることが可能となった。同装置は時間分解型の両手法を測定できる日本初の装置である。 磁性材料FePt薄膜のXMCD測定を行い、超高速の光誘起相転移ダイナミクスの観測に成功した。フェムト秒レーザー照射後50ピコ秒以内にFeサイトで光誘起の消磁(相転移)が生じ、150ピコ秒程度の緩和時間で磁化が回復していく様子が、Fe 内殻L吸収端を用いたXMCD測定により明らかとなった。本測定は歪みの少ない電子収量法を用いて行った。Fe L2端、L3端で同様のダイナミクスが観測され、XMCD測定における電子収量法の有用性が明らかとなった。XMCD変化の光励起強度依存性には閾値的な振る舞いが観測された。このことから、この光誘起現象に協同効果が働いていることが示唆される。 ビームタイムの問題から、遷移金属カルコゲナイドの測定成果を公表するところまでは研究が進まなかったが、上述のFePt薄膜の成果に関して論文を投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、完成した測定装置・システムを用いて、遷移金属カルコゲナイドの測定研究に取り組んでいく。TTe2(T=Ir,Pt)およびAFe2X3(A=Ba,Cs,X=S,Se)の2種類の超伝導化合物の測定を計画している。両化合物の光誘起相転移ダイナミクスを観測し、ダイナミクスの観点からこの物質の示す超伝導や構造相転移、及び磁気転移のメカニズムを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究は測定装置及びシステムの完成を最優先としたため、遷移金属カルゴゲナイドの光誘起相転移ダイナミクスの実際の測定を行うところまでは研究が進展しなかったため、使用額が当初計画から変更になった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、遷移金属カルゴゲナイドの光誘起相転移ダイナミクスの測定を海外の放射光施設での測定を含めて、積極的に行っていく計画である。ドイツBESSYII等で2週間程度のやや長期の測定が予定されているため、そちらへの出張旅費などとして使用する計画である。
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