研究課題
本研究は、非従来型の超伝導やトポロジカルな電子物性などの新奇量子現象を示す遷移金属カルコゲナイドの電子状態を、放射光光源を利用した時間分解型の共鳴軟X線散乱(RSXS)及びX線円偏光磁気二色性(XMCD)という新手法によって、ダイナミクスの観点から解明することが目的である。昨年度の研究で、時間分解RSXS及びXMCD測定装置およびその測定システムが完成した。本年度の研究では、同装置を利用して鉄カルコゲナイドAFe2X3の基底状態のRSXSおよび時間分解RSXSを測定した。Fe内殻L吸収端を用いた基底状態のRSXS測定では、超伝導体から遠いCsFe2Se3においては低温で磁気秩序によるRSXSが観察されるが、超伝導に近いBaFe2S3においては磁気秩序とともに軌道秩序と関連するRSXSが観察された。BaFe2S3においては磁気秩序と軌道秩序は共存し、同じ回折ベクトルで示されるが、エネルギーと偏光の両面でRSXS信号が分離できること及び両者が異なる温度依存性を示すことを明らかにした。また時間分解RSXS測定によりCsFe2Se3の超高速の光誘起相転移ダイナミクスの観測に成功した。フェムト秒レーザー照射後50ピコ秒以内にFeサイトで光誘起の消磁(相転移)が生じる様子を観測した。また、ダイナミクスは強い励起光強度依存性を示し、比較的弱い励起強度(1mJ/cm2以下)の場合は、100ピコ秒程度の緩和時間で磁化が回復していくが、強い照射強度の場合(3mJ/cm2程度)は、緩和に数ナノ秒以上の時間がかかることが明らかとなった。
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