近年、宇宙線ミューオンを用いた火山などの巨大構造物の透視が可能となり、関連する技術の更なる高度化・多様化に向けて現在も活発に議論・研究がなされている。しかし、これまでの検出器はその大きさのため地上にしか設置できず、上空から飛来するミューオンを用いた手法では、地下構造を透視することはできなかった。そこで本研究では、宇宙線ミューオンを用いて地下構造を透視するための観測技術を開発・実用化することを目的として、研究・開発を進めてきた。 2018年度は、2017年度に耐圧容器の破損によって故障した検出器の修理を行った。プラスチックシンチレータを除く全ての機器の交換が必要となったため、耐圧構造の再設計・製作を行い、修復を完了した。 また、これまでの測定結果を確認・補強するための較正測定を重点的に実施した。測定結果は現在解析を進めている。これとあわせてシミュレーションにより断層が存在しないと仮定した場合の宇宙線ミューオンの到来頻度を計算し、更に詳細な検証を進めている。 更に、今後より一般的な規格である直径86mmのボアホールにて観測を実施するため、より小型かつ高精度な測定を実現可能な新規検出器の開発に着手した。新規検出器は中心に波長変換ファイバーを通すための穴を空けた三角柱のプラスチックシンチレータを組み合わせたもの使用し、シンチレーターの形状と信号強度から到来方向をより高精度に測定可能である。また、光検出器および読み出し回路も改良し、現行検出器では測定できなかった仰角を測定可能になると期待できる。 今後は、これまでに収集したデータの詳細解析を進めるとともに、新規検出器の完成と多くの地下測定を実施することでその有用性を確立し、この技術が地下構造測定の新手法として定着することを目指す。
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