研究課題/領域番号 |
16K21003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 暖生 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (10450214)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 映像記録 / オープンデータ / 規範 |
研究実績の概要 |
コアサイトとする山中湖村では、山菜採り及び調理に関する映像記録を取るとともに、地域の情報拠点(公設図書館)での記録のアーカイブ及び公開について研究打ち合わせを進めた。東北地方(岩手県)、北陸地方(福井県)のサイトでの山菜・キノコ採りに関する映像を用いた記録を取ったが、これらを地域向けにアーカイブ・発信するために適切な施設または団体を見いだすことができなかった。 東北の調査サイトで記録した山菜採取の映像を題材として、従来からある、テキスト、静止画といった記録形態およびその媒体と比較検討をした。これにより、以下のような知見を得た。 (1)記録形態としてのビデオ:ビデオで記録し、編集を試みた結果、文章化の難しい知識や技能、規範意識・行動について直感的に伝えることが容易であるとわかった。一方で、植物種などの判別、オンデマンドでの情報を提供すること等は不得手である。 (2)文章と画像の特性:文章はあらゆる事象を表現しうるが、身体的な感覚に基づく知識や行動を的確に表現することは困難である。写真画像あるいは絵画は、植物種や菌類種の判別において最も強みを発揮する。冊子や資料として編集されたものは、利用者が必要に応じて一部分の情報を取り出して活用することが容易である。 (3)アーカイブの方法:インターネット上の記録媒体を用いれば、どの記録形態によるものも誰もが閲覧可能なものとして提供が可能である。しかし、特定の地域の記録が無制限に公開された場合、資源を目当てにした来訪者による乱獲や地域住民の財産への侵害行為も懸念される。ビデオ映像の強みである規範的行動などを主題とするものは、オープンな形でのアーカイブも許容されるが、地域や資源内容が詳細に特定されるものは、地域内の公共施設等でアーカイブされ、提供されることが望ましい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コアサイトである山中湖村では、予定通り映像記録を納めるとともに、地域の情報機関との協議を進めることができた。東北地方の計画サイトおよび北陸地方の計画サイトでは、映像記録を順調に採録することができたが、地域の公共的施設あるいは地域おこし団体などで、情報拠点として適切なカウンターパートを探し出すには至らなかった。 当初計画していた南九州地方での調査および研究打ち合わせが予算の都合から断念せざるを得なかった。また、研究資料を公開するためのウェブサイトを外注で構築することを計画していたが、これも予算の都合から断念せざるを得なかった。 この状況を受けて研究計画を修正し、デジタル資料として諸データを公開することの可能性と課題について関連する研究者らとディスカッションすることに注力することとした。また、外注によらないオンラインデータベースを含むウェブサイトの構築について専門家と協議することとした。 結果として、記録媒体とその公開をめぐる検討を深めることができ、その結果を学会にて報告することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画と異なる点として、以下の点について重点的に取り組む。 (1)研究ウェブサイトの整備:記録のアーカイブ・発信媒体として、自作で可能な範囲でウェブサイトを整備する。特に、地域において適切なアーカイブ・発信主体がない場合を想定し、前年度の記録媒体と発信方法の検討に基づき、オープンアクセスとなることに配慮した形でのアーカイブ・蓄積方法を検討する。 (2)規範に関わる映像記録の作成:前年度の検討により、自然資源の採取活動を映像として記録し、オープンデータとして発信する場合、規範的行動を主題とすることが、資源保全の観点から望ましいことが見えてきた。そこで今年度は、映像記録を取る際、規範的行動がより多く、明確に伝えられるような調査を実施する。 シールド調査では、前年度に実施できなかった南九州地方での調査を開始する。引き続き、コア・フィールドおよび東北地方、北陸地方でのフィールドで採取活動の映像記録を実施する。コア・フィールドでは、地域おこし団体と記録の活用方法について議論を開始する。東北地方、北陸地方ではカウンターパートとなる主体が見つかり次第、データのアーカイブ・発信方法について議論する。
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